おすすめweb小説紹介サイトラノプロ『甦身(よみ)への終電――小説家になろう』

ミステリー初心でも楽しく読める!!

《作品タイトル》

甦身(よみ)への終電

《作品情報》

 

作者“スライムさん
作者のツイッター
・あらすじ

終電に居座り続ける不思議な少年は今宵もまた心を導く。

『心』。それは他者を慈しみ、時には妬むものでもある。その心があればどんな人間であろうと、どんな存在であろうと、少年の元へと誘われる。
誘われた者は『心』に残っている大切な何かを見つけ還っていく。
大切な存在を守りたい。大事な君と、いつまでも共に歩きたい。
その願いを叶え、そして導く。それが少年の役目である。

この物語は大切な『心』を導く、ハートフルな切ない人間ドラマです。

※アルファポリスでも投稿しています。

 

 

ジャンル

・その他〔その他〕

 

キーワード

ミステリー サスペンス ハートフル 百鬼夜行/妖怪 終電 短編集 ネット小説大賞六感想 狭間の世界/切ない 微ファンタジー 人間ドラマ オムニバス 時々ほっこり R15は保険

 

 

掲載日  

・2018年 01月23日 12時13分

 

《第一話特別掲載》

この度、スライム様の心優しい気づかいにより第一話を掲載させていただくことになりましたm(__)m

 

深々と降る白い雪が地面へ落ちていく。
土の上に積もる雪は徐々に増えていき、やがて辺り一面を白銀に染めあげていく。
その雪が積もった地面の上で、もっそりと動く小さな影があった。

猫のような金色の瞳は今にも閉じてしまいそうなほどに眠たげだ。
ボサボサの黒髪は肩まであるものの艶がなく、砂ぼこりや雪で汚れていた。
まだ幼子と分かるほどに手足は短い。けれど骨と皮だけの体で土気色だ。
服装に至っては肌色の布切れ一枚を体に巻き付けているだけで、とても服とは言える代物ではなかった。
そんな幼子の瞳からは、時折涙がはらはらと落ちる。

「お腹、空いたなあ……」

幼子は覇気のない声を出し、小さな手を隣へと伸ばす。

「……ねえ、お兄ちゃん」

紫に変色した唇を必死に動かし、今にも閉じようとしている瞳を無理やり開ける。

「私たち、死んじゃうのかな?」

降り積もり続ける雪は頬や手足の上に落ちてくる。
見上げた先は雪を降らせる空しかなく、冬の風が肌を凍えさせていく。

「……お兄ちゃん?」

幼子は淡々と言葉を口にしていくが、隣にいる人物が何も答えてくれないことを不思議に思う。どうして答えてくれなのかと、寒さで固まり始めている首を無理やりに動かす。
幼子が隣を見やると、そこには瓜二つの顔立ちの者がいた。
頬骨がくっきりと分かるほどに痩せ細っている。同じ髪色。同じ瞳。けれどお兄ちゃんと呼ばれた者はピクリとも動かない。

「嘘……だよね? お兄ちゃん……」

絞り出した声は雨飛うひる雪の音にかき消されていく。
幼子が手を伸ばすも、相手は上を向いたまま答えてはくれない。
幼子の隣で仰向けになっている者の瞳はずっと空を見ている。けれど瞬きすら……呼吸すらしておらず、幼子は兄が死んだのだと気付く。

「うう……やだよ。お兄ちゃん!」

既に息耐えた兄の冷たく凍り付いた右手を触りながら、置いていかないでと紅涙こうるいを絞り続ける。

ーーお兄ちゃん。私を置いていかないで。

死んだ兄に心で呼び続ける。
ひとりぼっちになりたくない。ずっと一緒にいたい。
そんな気持ちだけが涙を流させていった。

「……私も連れてって。お兄ちゃん」

死後硬直している兄の手を握る。
霧のような白い息を漏らしながら、幼子は啼泣ていきゅうするのを止めない。

しばらくすると幼子は声に力が入らなくなったのか、段々と喉に痛みを感じ始めた。
何度も痰を出し、咳を繰り返す。
声はもう出なくなったのか、金魚のように口をパクパクとさせているだけだ。
幼子は声にならない声で泣き続けた。心の中で思いの丈を叫び続けた。
届かぬ空に向かって声を張り上げる気持ちで、高く高く叫ぶ。

「ーー繋ぎ止めてやるぞ?」

片手を高く挙げた幼子の顔に、透き通る声と共に影が落ちる。
幼子は両目を瞬かせ、声の主をジッと見つめる。
さらりと流れる絹糸の如き黒髪は青みを帯びていて、その一本一本に幼子は興味をひかれていく。細い糸のような髪が揺れ、時たま幼子の顔にかかる。
細くも太くもない体格なのだが、顔立ちは端麗であった。
狐のように細い瞳だが、真昼の太陽を落としたようにあかい。それでいて宵闇のように深く底が見えてこない。
整った目鼻立ちに深紅の瞳が似合う。そう思えてしまうほどに不思議で妖艶な空気を放っていた。
薄い青色の着物と濃い紫の羽織りを着ていて、雪の中には似つかわしくない下駄を履いている。

長い黒髪の人物は幼子のおでこにそっと手を置く。隣で既に亡くなっている者のおでこにも手を置き、優しく撫でていく。

「頑張ったのだな。君も……この少年も、な?」

亡骸となった少年の両目を閉じてあげた。
そして長い黒髪の人物は着ている羽織りを幼子へと掛けてあげる。

「さて。どうしたい?」

長い黒髪の人物は幼子へと雅た笑みを送る。

「私はーー」

幼子は薄れゆく意識の中、ある決断を下した。

□□□■■■

『この電車は終点〈四つが駅〉まで各駅停車となります。間もなく発車します。この……』

夜空へと視線を向ければ、そこには無数の星が連なっていた。
周囲を見渡せば人はおらず、駅前だと言うのに車のエンジン音すら聞こえてこない。耳を澄まして聴こえてくるのは鈴虫の合唱だけだ。
ビルというビルもなく、家という家すら見当たらない。あるのは畑と木々が生い茂ている山だけであった。

「あー! ま、待ってください!」

誰もいない駅の改札口。そこから慌てて電車に乗り込む者がいた。
群青色の帽子で顔が隠されているので、男なのか。女なのか。それすら分からない。

「よいしょっと」

帽子と同じ色のマントを羽織り、半ば無理矢理に電車に乗り込む。
肩で息をしながら閉まるドアから少し離れる。

「間に合ったあ」

群青色の帽子の人物は電車の中を見渡す。
けれどこの人物以外誰もおらず、静まりかえっている。電車が線路を走る音だけが車内に響く。
群青色の帽子の人物はお見合い列車の長椅子に腰掛け、ズボンのポケットから小さな何かを取り出す。
小さななそれは黒い紙であった。

「ふふ。さてと……」

帽子の鍔を軽くつつく。そして黒い紙を宙へと投げた。
すると黒い紙は重力に逆らうように宙を浮遊する。
それを見た群青色の帽子の人物は右手をパチンと鳴らす。
するとどうだろうか。
宙に浮いている黒い紙はブルブルと振動し始めたのだ。それだけではなく、一枚だったはずの紙は二枚三枚……と、どんどん増殖していった。
やがて宙は漆黒に染められてしまったかのように、四角すらないほどに暗黒に包まれてしまった。

「えっと……あっ。これ、かな?」

手品のような。魔術のような不思議な光景なのだが、群青色の帽子の人物はそれすら当たり前のように眺める。そして無数に浮遊する紙の一つを手に取った。
黒い紙は他の物と何ら変わらない。しかし一つだけ小さな穴が開いていた。
群青色の帽子の人物は片目を瞑り穴を覗く。

「……この方ですか」

呟く声は電車が走る音にかき消されていく。
群青色の帽子の人物が穴から覗いて見ているのは……

真夏の太陽の元、公園のベンチに一人で座っている青年であった。
顔を伏せっているため表情などは分からない。溜め息が時折漏れていて、何かを呟いているようにも思える。
青年の隣には白くてふさふさな毛並みの猫がいて、小声で鳴いている。

「……飲まなきゃ」

青年はベンチに置いてある袋に手を伸ばし、ガサゴソと音をたてながら漁る。その袋には〈薬用〉と書かれており、どこかの病院の名前が印刷されていた。
青年はそれを手に取り口元へと運ぶ手前……口を開いた状態で薬を飲むことなく、袋に閉まってしまう。

「……で…………て。……やきが……なあ」

ぶつくさと呟き、薬から目を反らす。
隣で休んでいる猫は青年の行動を目で追うだけにとどる。けれど猫の瞳からは……

身を知る雨が溢れていた。

《感想》

 管理人は正直なところミステリーとホラーがあまり得意ではありません。ホラーは単純に怖いから苦手ですし、ミステリーは仕掛けに気が付くことができなくて読み終わった後に疑問が残り続けてしまうんですよね(‘◇’)ゞ
 そんな管理人なんですが、このミステリー作品はとても詳しく教えてくれるので読み終わった後の疑問が何一つとして残りませんでした。管理人のようにミステリーをとても苦手としている人からするととてもうれしい配慮です。
 わかりやすさもさることながら、その文章一つ一つに使われている言葉はどれも適切な表現ばかりで、語彙力もプロ顔負けです(^▽^)/
 ミステリー初心者でも全然OKの作品ですのでぜひともご一読お願いしますm(__)m

 

 

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