はろー、異世界学! 第一話(入学②)

「……ご子息のご入学を心よりお祝い申し上げるとともに、本学への入学に賛同して頂いた保護者の皆様に感謝の意を表します」

入学式の緊張感は、興奮と期待でうやむやになっている。周りの新入生も、入学後の生活の話題で静かに盛り上がっている。
しかし、新入生だけで五千人もいるような大学だ。自分たちは静かにしていても、それが多数集まれば、若干騒がしくなってしまうのも仕方があるまい。
その五千人の中の一人であるこの私も、隣の友達と会話をしているので、胸を張って非難できるものではない。

「結菜も同じ学部でよかったぁ!」

「ふふっ、もともと真琴と同じ学部にしようって話だったじゃん」

楽しく友達らしい会話をしているが、一つ注意してほしい。 確かに、私と真琴は高校時代からの親友で、お互いに同じ大学の同じ学部へ進学しようという話だった。
しかし、互いにそんな話は冗談だと考えていた。 というのも、この大学は国際技術大学と言って、学校からの推薦と面接官十人を前にしたプレゼンテーションによって選考される、この国ではトップレベルに入るのが困難な大学なのだ。それも、国内だけならまだしも、国際と名乗っているだけある。国外からも生徒が受験しにやってくる。
そんな難関大学の、同じ国際社会学部に受かったのは、奇跡としか言いようがない。 もちろん、この大学への推薦をもらえる枠は、高校が進学校だったとはいえ、少ない。たった三枠のみ。つまり、そのうち二枠を私と真琴の二人が勝ち取ったわけだが、そんな簡単なものではなかった。 少なくとも、いまここで要約して話したとしても一日はかかるほどの努力を積み重ねてきたのだ。

「やっと受験終わったと思ったら、もうすぐに始まっちゃうもんね」
「わかる~! でもまた結菜と協力プレイすれば、楽々だよぉ」
「お気楽ねぇ……。……ところで、真琴はもう科目なに取るか決めた?」

マイクからスピーカーへと通り出てくる音は、いつの間にか女の人の声に変わっていた。役職紹介をやっているらしい。
私たち、国際社会学部の学部長は……、うん禿げたおじさんだ。少し腰も曲がっており、声はガラガラ。 おじさんというより、お爺さんと言った方が似合う。もちろん、普段は「教授」やら「先生」やらで呼ぼうとは思うが、裏では「学爺」と呼ぶことにしよう。学部長お爺さん、略して「学爺」とは、なかなかの語呂だと思う。

「うちは経済系が中心かなぁ。あとは心理学とか、倫理学かな」
「結構かぶってるね。私も経済中心で、心理学と地誌学を取ろうと思ってるの」
「へぇ、地理得意だったもんねぇ! あ、そうだ」
「なに?」
「この異世界学? これって、どんなことやるのかなぁ?」

渡された資料には一年生で取れる科目一覧がびっしりと書かれている。
英語や国語、数学や経済、経営など。ジャンルは様々だ。 必修科目はあるが、それ以外は別の学部の科目でも取っていいこととなっている。
その中の「国際社会学部」に分類された科目の一つを、真琴は指をさした。

『学部名:国際社会学部 科目名:異世界学(通年:六単位) 担当者:白鷺 湊 授業概要: 人間が発見した異世界は今年度までに三つある。「リクシオン」「ジル」「ハイタミ」だ。これはニュースなどでも取り上げられている上に、いわゆる魔法が使える事でも話題になっている。 異世界学では、三つの異世界を中心に詳しい内部事情を調べていきながら、また異世界とのコミュニケーションの取り方、そして異世界を定義していく。 この学問は想像の学問である。想像力を働かせ、論理的に異世界を解き明かしていく。 この異世界学は、今年度から始まったゼミ形式の授業であり、担当は白鷺の一人で持つ。受講最大人数は五名。 詳細はオリエンテーションにて説明する。』

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