はろー、異世界学! 第二話(入学②)

異世界が存在することは世界中で有名になっているから、おそらく誰でも知っている。
しかし、学問として学ぶほどの知識は全くない。 ただ想像の学問とあるように、異世界学は本当に答えのない学問なのかもしれない。

あぁ、私の好奇心をくすぐってくる。

「わたし、取ってみようかな……」
「……えっ!? 結菜、この異世界学取るのぉ?」
「うん、なんか好奇心がさ、叫んでるんだよね」
「よくわからないけど……、でもうちも少し興味あるかも。オリエンテーション一緒にいこぉ!」
「おっけー!」
約束を取り付けた頃、入学式は終盤にさしかっかっていた。 会話に夢中になりすぎてしまったようだ。少し気を付けなければ……。
それにしても、異世界学は本当に気になる。いまもし、近くに白鷺先生がいるのなら、すぐに質問をしに行きたい。 それくらい私は魅せられてしまっていたのだ。
※----※----※----※----※
「特待生入学して、四年間を修め、果てには主席卒業か」 「驚きっすわ、ホント」
「ワシの目は間違っておらんかったのかの、ふぇっふぇっ!」
「あんた、プレゼンの時、『特技が想像で、趣味が異世界探索って、なにをアホなこと言ってんだ?』とか言ってたよなぁ。あー、懐かしい」
「あ、あれはだな。試しとったんじゃよ。そもそも、経歴にあんな立場は書いてなかっただろうが。卒業する直前に聞かされて、死にかけたわい、ふぇふぇっ!」
「そのまま倒れても良かったんだけどな。まぁ、とりあえずさ」
「うむ」
椅子に座ったままの爺さん……、学長から一歩下がり、襟を正す。そして、ゆっくり腰を曲げながら、誠意を見せる。
「これから国際社会学部で異世界学を担当させていただく、白鷺湊です。よろしくお願いします」
「よろしく頼むぞ。こちとら、期待はしとるんやからな。……ところで、生徒たちは連れていくのか?」
「あぁ、そのつもりだ。百聞は一見に如かずってな、経験が一番だしな」
首元を占めているボタンをはずし、ネクタイをゆるめながら、話す。実際、これくらいの距離感の方が話しやすい。それは爺さんも同じようだ。 首から下がる名前と学部名の書かれたICカードの入ったプレートを手に持ち、じっくりと眺めてからまた戻す。
「相当な回数連れてく予定だが、構わないよな?」
「それはもちろん。他の授業を取らなくても、異世界学を最高ランクで修めれば、相当な箔をつけるつもりじゃからの。……しかし、果たしてそんな強者が今年の新入生におるんかのぉ?」
「採点は厳しくやらせてもらう。とりあえず、五名に絞るつもりだ」
一礼して、相変わらず座ったままの爺さんを背に学長室を出て行く。与えられた研究室まで寄り道ぜずに向かい、すぐにオリエンテーションの準備を始める。とは言っても、あとはプリントを印刷するだけなのだが。他の科目では、科目宣伝用のポスターを貼るらしいが、それは手間がかかる。最終的に五名に絞らなければならないのだ。初期人数が少ない方が分別はしやすい。 その分、当たりを引くチャンスも少なくなるのだが、それを差し引いても、手間はかからない方がいい。
立ち上げたパソコンからワープロソフトを起動し、コピー機へと印刷の指示を送る。 整然と並べられた参考書や書籍を眺めながら、俺は入学式の終わりを待った。

入学式が終わると、授業のオリエンテーションが始まる。七日間にわけて行われるのだが、幸運なことに異世界学は今日になった。
つまり、あとの六日間は大学に顔を出さなくていいのだ。 これほど楽な仕事は他にない。……授業が始まれば地獄に一変するが、それを考え始めては鬱になる。 今という時を精一杯楽しむしかない。 印刷が終わるのを、俺はただ待っている。

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