おすすめweb小説紹介サイトラノプロ『天使はあくまで魔導書巻(グリモワール)――小説家になろう』

《作品タイトル》

天使はあくまで魔導書巻(グリモワール)

《作品情報》

作者“小鳥遊賢斗”

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あらすじ

主人公・能源(のうげん)章(あきら)は、最寄りの古びた図書館で、“喋る魔導書”リリスと出逢う。そして、その直後、魔獣に襲われ、彼女と魔法の契約をする嵌めに。
魔導書でもあり、天使でもある存在、“守護天使”との魔法契約――それは、大昔に恐竜から進化した生命体、“竜人(ノガルドティアン)”との戦争、“幻想戦争”に巻き込まれることを意味していた。
章は、持ち前の知力、リリスの持っている魔法の知識を使い、危なげながらも、彼らとの戦闘を切り抜けていく。

――これは、追い詰められてからの、逆転劇。

ジャンル

ローファンタジー〔ファンタジー〕

キーワード

残酷な描写あり  異能力バトル ラブコメ 現代ファンタジー 魔法 霊界/地獄/天国 高校生 天使 男主人公 現代 シリアス オカルト ハッピーエンド 戦争 竜人

掲載日  

2016年 02月18日 16時43分

《第一話特別掲載》

 身支度をし、上着を厚めに着て、自転車に乗る。吐く息が白い。向かう場所は、こじんまりと佇んでいる地元の古びた図書館だ。開館時間は十時だが、いつも通り遅めに起き、昼食を取ってから家を出たので、今は午後一時過ぎになっている。

 それほど家からそれほど遠いわけでもなく、また急いでいるわけでもなかったので、僕は、冬独特の澄み渡った空気の爽やかさを、身体全体で味わいながら、ゆっくりと自転車を走らせた。

 途中、赤信号で自転車を止め、ふと空を仰ぐと、一面が雲に覆われていた。僕は冬生まれということもあり、今にも壮麗な純白の雪が降りてきそうな、冬独特の灰色の曇り空が大好きだった。

 図書館の前にある、小石の敷き詰められた駐輪場へと自転車を置く。

 そして中に入ると、ふわっとした柔らかな暖気が、身体全体を包み込んだ。

 読書家の母に聞いたところによると、ここには絶版になった本が色々と置いてあるらしく、古風なこの図書館は、“本の虫”たちにとって憩いの場となっているらしい。

 司書さんと軽い挨拶を交わし、借りていた本を返却する。そして、何度となく通り抜けた通路をするすると歩いていくと、ものの数秒で目的のSF作品が置いてある一角に辿り着いてみせた。

 それからどれを借りようかと考えていると、何やら右の視界に違和感を感じ、思わずそちらへと目をやった。すると、整然と収まっている本の中に、弱々しく光を放つものが、一つだけある。僕は思わず自分の目を疑い、目を擦っては何度も凝視した。それでもやはり、微弱ながらもその本は光っている。

 なんだこれは? 夢でも見ているのか?

 僕はまず、自らの目を疑った。

 そして、“それ”に近付き、注意深く観察すると、僕はほんの軽い気持ちで、手を伸ばした。

 すると、その本に触れた瞬間、不思議な声が脳内に響き渡った。

「聞こえる?」

「……え?」

 辺りを見渡したが、周りには誰も居ない。遠くで司書さんがコーヒーを飲みながら新聞を読んでいるだけだ。周りにはただ、まるでこの体験が虚構だとでも言いたげな、何の変哲もない光景が広がっている。

「気のせいか……?」

 目の前で起こっている超常現象に、僕は思わず身構えた。部屋を満たす空気が、生ぬるく不快に感じられた。

「その様子だと、聞こえてるみたいね」

 なんだ? 僕は一体何処から話しかけられている……?

 僕はきょろきょろと辺りを見回したが、やはり何も異常は見られない。強いて見られるとすれば、自分の耳にだろう。

「目の前に居るわよ」

 目の前といっても、あるのはただの本棚だけ。さらに手前となると、今まさに手に持っている本しかないわけだけども。

「まさか、いや、まさかな。“これ”なわけがないよな」

 我ながら馬鹿馬鹿しい想像だ。

「『これ』呼ばわりは流石にないんじゃない?」

「……は?」

 本が喋るという驚きの光景を目の前にして、段々と血の気が引いていく僕。

「私には『リリス』っていう名前があるの。ちゃんと名前で呼びなさいよ」

 本当に『この本』が……?

 口を開けて、目を見開いて、呆然と立ち尽くす。現実離れした出来事に対するあまりの驚きに、僕にはすっかり周りの音が聞こえなくなってしまっていた。

 ――十数秒が過ぎた頃だろうか。

 僕は彼女の声に応答してみることにした。

「そんなこと言われても、困るんだけど」

「ほら、私が自己紹介したんだから、あなたも名乗ってくれないと困るわ」

 何だかやたら高飛車な奴だなと思い、少しだけいらつきを覚えた。それでも、目の前で起きている現象を少しでも前に進める為に、一応名乗ってみる。

能源のうげんあきらだよ。……これで満足か?」

「そう。よろしくね、章」

 よくわからないが、やたらプライドの高い奴、いや、本? 本と互いに自己紹介って、なんだこの状況?

 僕は今現在体験しているわけのわからない出来事を前にして、段々と混乱し始めた。

 そして、その混乱をどうにかする為に、僕は彼女に色々と質問してみることにした。

「それで? 本に名前があるなんて不思議なことがあるもんだな」

「私は天から使わされた者の一人だからね。名前くらいあるわよ」

 あまりに突拍子のない答えに、しばらく茫然自失となる僕。

 どこから突っ込めばいいんだ……?

「やっぱり流石に驚くわよね。生ける魔導書って言っても差し支えないのだけれど」

「はぁ。それはどういう喩えなんだ?」

「いや、そのままの意味よ」

「…………」

「…………」

 互いの認識のすれ違いが続き、思わず双方が黙りこくる。ついに気まずい空気になってしまった。

 何を言ってるんだこいつは……?

 周りに空調の音しかしないせいか、それがやたらと大きく耳に響く。

 その後、数秒かけて、僕は気持ちを切り替えた。

 とりあえず彼女に対する情報を集める為に、本なんだから中を読んでみよう。

 そう思い、僕はのページを開こうとした。しかし、いくら頑張っても、微塵も開けることが出来ない。

「いきなり開くなんて、レディに対する態度がなってないんじゃない?」

 自称レディの本が何かを言っているようだ。相変わらずイライラさせるのが得意な奴だな。

「そういえば一つ大事なことを言い忘れていたのだけど」

「何だよ」

「私の声、他の人には聞こえないから」

「……は?」

 はっとして、あたりを見回す僕。司書さんがこちらを訝しげに覗き込んでいたが、僕と目が合うと、しらっと目を逸らした。

「すぐにこの場を離れるべきではないかしら?」

「元はと言えばお前が……! いや、これじゃらちがあかないか。仕方ない……」

 リリスを本棚に返して立ち去ろうとする僕。

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」

「よくよく考えたら本が喋るわけないしな」

「待って!」

「今日はどのシリーズを借りて帰ろうかなー」

「今日を逃すと大変なことになるんだから!」

「あれは目の錯覚だったのかなー」

「ストップストップスト――」

 リリスのもとへ駆け足で駆け戻る僕。

「冗談」

「……あんた本気ではっ倒すわよ?」

「ごめん、ごめん」

 声音に殺気の篭っているリリスに対して、半笑いしながら僕は謝った。

 さて、気を取り直して、と。この喋る本を持ち帰るにしても、普通に司書さんに見せていいものか。

「リリス、お前をどうやって持ち帰るか検討中なんだが、司書さんに見せて持ち帰れるのか?」

 リリスを口に近付け、小声で話しかける僕。

「は? そんなわけないじゃない」

 彼女の声色とその台詞からは、イラつきが滲み出ている。あからさまにからかわれたんだから、そりゃそうなるか。

「とりあえず司書さんの死角に行ってコートの中に隠すか。とりあえずカムフラージュとして目的だったSF作品は一応借りてくとして――」

「司書さんにはもう見られてるわよ? レディに対する扱いがなってないんじゃない?」

 自業自得と分かっているものの、ここまで切り込まれるのは、非常に面倒くさい。

 僕は思わず、強めの口調で彼女を抑えた。

「お願いだから黙れ」

「は? 元はといえばあなたが――」

「お願いだから、黙れ」

「…………」

 よしよし、なんてな。

 ……その後、僕はその任務を無事遂行して、早足で図書館を出た。

 あーあ、持ち出してきちゃったよ。もう取り返し付かないぞ。これ、下手したら盗難なんじゃないか? 少しあの図書館行きにくくなったな。

 僕は盗みのようなことをした後ろめたさからか、周りの様子が気になり、きょろきょろと辺りを見渡し、警戒した。

「後のことなら安心していいわよ。あの図書館に所蔵されていた本じゃないから、足はつかない」

「そういう問題じゃな――」

 図書館の裏、駐輪場とは反対側の、物陰から漂ってきた異様なまでの瘴気しょうきに気を取られ、思わず言葉を切る。

「なんだ……?」

 周囲が不穏な空気に満たされていく。そして、“それ”は黒いオーラとともに、ゆっくりとその荘厳な姿を、物陰からあらわにした。

「なんだこいつ……なんだこいつ……!?」

 黒いオーラをその身に纏った、身の丈を優に超すかという大きさの化け物。その姿は狼のそれに似ている。空腹の絶頂で獲物を目の前にした喜びからなのか、口からは大量のよだれがしたたっている。その圧倒的な威圧感に、本能から足が竦んだ。

 生命の危機を感じ、足に力が入らなくなる。そしてそのまま膝から崩れ落ち、コートの内側にしまってあった魔導書――リリスが転がり落ちた。

あきら……!」

 その猛獣は、まるで退路を断たれた獲物を弄ぶかのように、ゆっくりと、こちらに接近してきた。

 二メートル。

 ――一メートル五十センチ。

 ――――一メートル。

 ――――――眼前三十センチ。

 “そいつ”の鼻息を肌で感じるほどの距離。

 僕は死を覚悟した。

 が、まさにその瞬間、轟音と共に稲妻が眼前の絶妙な距離を一閃する。その衝撃で、地ならしが辺りに発生した。あまりに強いその閃光に、しばらく目が眩む。

 何が起こったのか分からず、しばらく茫然とへたりこむ僕。

 やがて視界が冴えてくると同時に、意識がはっきりしてくると、目の前で身丈ほどもある“そいつ”が痺れ、ぐったりと倒れ込んでいるのがわかった。

 サエカさん……?

 僕は直感で、彼女が助けてくれたのではないかと感じた。

 雲が開き始め、淡い日差しが差し込み始める。すると空に、天使の梯子がかかった。

 天空そらを見上ると、目を瞑って手を合わせる。

「すぐにこの場から離れましょう!」

「分かった!」

 僕はリリスを拾い、自転車の籠に乗せると、全速力で郊外の方へと漕ぎ始めた。

《感想》

この作品は一見どこにでもあるファンタジー作品のように見えますが、オリジナリティの連発で作者様の独自性を多く感じ取ることできました。
まず最初に驚かされたところは幅広く強固な世界観ですね。ユダヤ教やキリスト教が採用している旧約聖書の序盤で語られている人類の始まりですが、これらはかなり複雑なものでストーリーの中に組み込もうとするとついつい破綻しがちになってしまいます。
しかし、この小説ではうまいこと神話と物語を融合させており崩壊させることなく主人公とかかわりを持たせることができていました。

少し独特の固有名称が登場する作品ですので苦手な方がいらっしゃるかもしれませんm(__)m それでも非常に面白い作品だと思いますので皆さん食わず嫌いせずに一度目を通してみてください(^▽^)/

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