『魔獣と成りて君を想う  ―死を超え魔に堕ち幸願う―――小説家になろう』おすすめweb小説紹介サイトラノプロ

《作品タイトル》

魔獣と成りて君を想う  ―死を超え魔に堕ち幸願う―

《作品情報》

作者“矢佐間 ウドン

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あらすじ

※人外転生のハイファンタジー。ボーイミーツガール的な恋愛要素も多少あり。

家族と共に辺境で暮らしていたエルフの青年は、ある日人間からの襲撃を受ける。
父を亡くしながら妹を守り抜こうとするも、力不足を痛感した青年は最愛の妹をある男に託し、志半ばでこの世を去った。

しかし命は散っても未練が消え去る事はなく、青年は二人の行く末を見届けたい一心で魔獣転生の禁術に手を染める。
かくして転生に成功し黒き狼となった青年だったが、そんな矢先にとある蒼髪の巫女少女と遭遇。この出会いを皮切りに、青年の守りたいものは徐々に増えていく事となる。

ジャンル

ハイファンタジー〔ファンタジー〕

キーワード

R15 残酷な描写あり  冒険 シリアス 男主人公 現地主人公 人外転生 エルフ 種族間対立 魔法 恋愛 異世界 魔物 魔獣 OVL大賞5 HJ大賞2018

掲載日  

2018年 05月16日 00時35分

 

《第一話特別掲載》

ミドガルズ大陸、南部――

 開発が進んだ北部とは異なり、南部には手つかずの豊かな自然が今なお息づいている。こうした未開発の土地には危険な魔獣が多く棲息し、魔獣を恐れる人間は滅多に近づく事がない。故に、人間からの迫害を受け続けていたエルフ達にとっては好適の環境であった。

 事実、現在の大陸南部は彼らエルフ達の恰好の棲家となり、南部各地に広がる森には多数のエルフが息を潜めている。

――しかし。

「あったぞ! エルフの棲家だ!」

 今、そんな危険地帯に多くの武装した兵士達が大挙。寂しげに建つ一軒の古びた家屋を囲み、彼らは規律正しく包囲陣形を組み槍の穂先を向けている。

 ズラリと並んだ無数の銀の刃――常人なら震え上がるだろうその光景を、しかし古小屋の住人は睨み付けるように見返していた。

「なんでバレたんだ? ここには何重にも幻覚術を施しているのに……」

 中で息を潜めながら呟いたのは、細長い耳をした目付きの鋭い黒髪の青年。兵士達に向けられたその眼差しは鋭利だが、胸中の困惑と焦燥を隠しきれていない。微かに瞳が揺れているのがその証拠だ。

 抜き身の刃のように荒々しくも、人一倍繊細な彼の言葉に答えたのは、笑いながら背後より姿を現した白髪の男。その男の耳もまた、青年同様に細く長かった。

「魔術への耐性を持つ人間が稀にいるらしい。今更驚くような事もないだろ、運が悪かっただけの事だ」

 白髪の男――エルフにとって、それは前々から想定されていた事態。エルフの象徴たる二つの細長い耳は、彼ら武装兵士にんげんからすれば十分すぎる程の大きな違いで、迫害するに足る十全な理由である事は、常識中の常識。人間社会におけることわりと言っても過言ではない程に、人間はエルフをし続けている。

 なんでもない事のように騙られたその言葉に対し、黒髪の青年は一瞥しただけで何も答えない。口は歯噛みするように真一文字に閉じられ、険しい表情で外の兵士達の様子を窺っている。

――青年の服の裾が小さく引かれたのは、そんな時の事だった。

「お父さん、お兄ちゃん……私達、ここから逃げられるの?」

 小柄で丸みを帯びた、幼さが目立つ銀髪の少女。薄汚れ、所々擦り切れている男たちの衣服とは裏腹に、少女の纏う衣装はやけに小奇麗で汚れ一つ見当たらない。端正で幼げな顔は憂いに沈み、綺麗な丸い瞳には僅かばかりの涙を湛えている。

 兵を睨む兄の服の裾を握る小さな手には、およそ少女とは思えぬ力が宿っていた。そんな彼女を励ますように、お兄ちゃんと呼ばれた青年――クレイは笑う。

「大丈夫だ。こういう時の為に、隠し通路を用意してある」

「隠し通路?」

「寝室のベッド……その下に、地下通路を掘ってあるのさ。人一人通るのが精一杯の広さだが、浜辺まで繋がっている」

 そう妹に優し気に告げるクレイに、白髪の男が間髪なく続く。

「海まで逃げれば、あいつらも追ってこれやしないだろう。船が無い以上、奴らに海上を渡るのは困難だからな」

「なら、早く逃げないと。お父さんもお兄ちゃんも、早く寝室に――」

 もはや一刻の猶予もない。すぐにでも兵士達は小屋へと侵入してくるだろう。慌てたように少女は兄の手を握り、寝室へと駆け出す。しかしあろうことか、白髪の男は寝室とは反対方向である玄関戸へと向かった。

「お父さん?」

「……クレイ。シャーリィを、ちゃんと守ってやれ」

 男の手には、一本の細剣が携えられていた。洗練された刀身は一片の曇りなく、当時と変わらぬ高貴さを放っている。一度その細剣を手にすれば、誰しもがそれを業物と理解するだろう。

 だがどんな業物も、然るべき者の手に在らなければそれは屑鉄クズと同じ。剣の心得もない者が手にしたところで、その真価を発揮する事はない。

「親父、まさか――」

 男に剣の心得はなく、細剣を構える姿もどこかぎこちない。明らかに不格好だ。宝の持ち腐れという言葉すら、生温く感じる程に。

 だがそれでも、男にはそれを持っている必要があった。どうしても、持っていなければならなかったのだ。

「俺なら大丈夫だ。カアチャンが、一緒に戦ってくれるからな」

 全てを察した青年に、男はお道化どけて笑う。そして最後に、今にも泣き出しそうな娘を安心させるように微笑み――飛び出した。

 その手に、今は亡き愛妻の形見を抱えて。

「お父さん!!」

「ッ――」

 悲痛な叫びを上げる少女に対し、青年は無言で妹を連れて走り出す。隠し通路のある、寝室へ。それが当然だとばかりに、青年は男に背を向けた。

「お兄ちゃん! お父さんが!!」

 あれでは、死にに行くようなものだ。いくら人一倍魔術の扱いに長けた父とて、きっと助かりっこない……でも、父と同じくらい魔術に長け、そして母程ではないにしろ剣術にも長けている兄なら。あの父と兄が一緒なら、もしかしたら。

シャーリィは泣き叫び、訴える。

父を助けて。

見殺しなんて嫌だ、と。

「お兄ちゃ――」

「シャーリィ! ちょっと……黙ってくれ」

「……っ」

 そんなことは、クレイもよく分かっていた。己をその人生を賭けて育んでくれた愛すべき父を、どうして見捨てられようか。妹に言われるまでもなく、助けに行きたい。火を見るより明らかな現実から、逃げたいわけがない。

 しかしそれを父は許さない。仮に自分も戦うとして、その間は誰が妹を守るというのだ。戦えぬ妹が万が一人質になろうものなら、待っているのは全滅。他のエルフの援軍を望むべくもない以上、取れる策は限られている。

 例えば、そう。一人が囮になり、その間に二人が逃げる。これなら一人は死ぬが、二人は助かる。だからその囮役を男は買って出て、そして我が息子に言ったのだ。しっかり妹を護れ、と。

あぁ、シャーリィ。

お前に言われなくても分かっているさ。

――全て、分かっている。

「行くぞ、シャーリィ」

「……はい」

いつになく厳しい顔で――青年は淡々と告げる。

そんな兄に対し、少女はもう何も言えなかった。

 寝室に入り、ベッドをずらし、すぐさま微かに呪文を唱える。すると虚空から突然四角の扉が出現し、重苦しい音を立てて扉が開く。やがて二人の前に姿を見せたのは、土色の急な階段とひたすらに続く暗闇。

 ここを抜ければ大陸最南部、つまり海岸沿いの浜辺までたどり着く事が出来るだろう。

「これが――隠し通路……?」

「昔、親父が万が一の時の為に掘ったらしい」

「……お父さん、地属性の魔術得意だったもんね」

 寂し気に呟いた妹の言葉には聞こえぬ振りをし、階段に足を踏み入れる。手を握られている妹もまた階段を下り、途中転びそうになりながらも懸命に下りていく。

 そして階段が終わり地面に足を着けるや否や、暗闇一色だった通路が一変。自分達の居る一帯の天井が淡く輝きだし、通路を明るく照らし上げた。

「これは……照明機構か」

 改めて今自分が立っている地面を見てみると、そこだけ他に比べ少し盛り上がっていた。なんの変哲もない土の地面だが、恐らくはこの下に板状の感圧式魔導機構が埋め込まれているのだろう。こんな真似は、発明家でもあった母にしか出来ない芸当。

つまり、ここは――

「……お兄ちゃん、どうしたの?」

 足を止めている兄――つまり俺に、不安そうに声を掛ける少女。何かおかしい点を俺が見つけたとでも思ったのか、無骨なこの手を握る小さく柔らかい手は微かに震えていた。

「――いや、大丈夫。行こうか」

「本当に? 何か、変なものでも……」

「大丈夫大丈夫。本当に、なんでもないから」

――本当に、俺は無力だ。

 母に剣術を、父に魔術を教わり、独り立ちできるくらいには力を付けたと思っていた。だがどうだ、父は俺達を護る為に犠牲となり、母は死んでもなお俺達の進む先を照らす光となっている。

 子供は、どこまでいっても子供だ。子供が親を追い越す事はないのだと、生前の母は口癖のように呟いては、俺を小馬鹿にするように笑っていた。その度に俺は母に反発し、いつか剣術で打ち負かそうと躍起になった。

 もっとも、打ち負かす前に母は病で死んでしまったが。

 妹の生命を守る事に限れば、恐らく俺でもなんとかなる。だが、この先云十年と続く妹の未来を俺は幸せなものに出来るだろうか。親の庇護を失い、頼れるエルフの親戚も知り合いも居ない俺に、妹を守り切れるのか。

「(シャーリィ、お前は――)」

 絶滅に瀕し、劣悪な環境や立場での生活を送っているエルフとして生きるより、繁栄の最中にある人間として生きるほうがシャーリィにとって幸せなのではないか。

 俺は、シャーリィを守る事で逆に不幸にしてしまわないか――それが不安で仕方なかった。

《感想》

この作品はレベルが違う! 今はとりあえずこの興奮をかみしめさせてください。文章能力にストーリー、独創性ともにweb小説の枠を超えています。文句のつけようがありません。
どうしてこのレベルの作者様がどのレーベルにも拾われていないのかが管理人には理解できませんでしたね←上から目線ですみませんm(__)m
確かにシリアス感の強い作品ではありますのでなろうにおいては少し人気の出にくいところがあると思います。ですが、だからと言ってこの作品から逃げるのはただの食わず嫌いなのではないでしょうか。
レベルの高い作品ですので皆さんぜひともご一読のほどお願いしますm(__)m

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