『勇者はただの村人のようだ ~魔王を倒したのに時間が巻き戻ったので、気を取り直してまた冒険することにする~――小説家になろう』おすすめweb小説紹介サイトラノプロ

《作品タイトル》

勇者はただの村人のようだ ~魔王を倒したのに時間が巻き戻ったので、気を取り直してまた冒険することにする~

《作品情報》

作者“するめいか”

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あらすじ

元農民だったのに『赤い眼をしているから』という理由で人々を救うことになった勇者。彼は渋々冒険に出かけるが、早速仲間集めから手こずってしまう。

ツンデレ引きこもりのお嬢様賢者から飛ばされる暴言にビビりながらも、行方不明となったおバカな短剣使いを探すことに。

そうして半ば人間達から追放されるようにして命を懸けた旅に出掛けようとした矢先、ホームレスのいじめられっこやオタクの日本人までもが仲間に加わってきてしまう!

様々な予想外の事態に翻弄されながらも彼は半強制的に凶悪な魔王を倒すための戦いに駆り出される事となった!

これは、調べる呪文しか使えないただの村人が奮闘し、世界を平和にするまでのお話。そしてその後に知る残酷な運命に抗っていく物語だ。

※剣と魔法の世界で女の子も沢山出てくる異世界転ファンタジー小説です。コメディー、シリアス、恋愛、ホラー、バトルアクション等、多数の要素を含んでいます!

ジャンル

ヒューマンドラマ〔文芸〕

キーワード

R15 残酷な描写あり 異世界転移  異能力バトル ヒーロー 冒険 ラブコメ ギャグ シリアス 男主人公 勇者 魔王 タイムリープ バッドエンド ハーレム 魔法 ハッピーエンド

掲載日  

2018年 05月27日 17時42分

 

《第一話特別掲載》

 

「魔王……! やっと、やっとここまで辿り着いたぞ……!」

 長い、本当に長い旅の先で今、勇者はとうとう悪の根元である魔王と対峙していた。

 魔王の間には神聖な空気が漂い、その姿は背後のステンドグラスから差し込む光によって黒い影と化している。

 これまでに無いような緊張感が勇者に圧しかかってきていた。汗が頬を伝い、手足が震えているのを感じる。

 怖いのだろうか? いや、そんな訳はない。しかし、彼の中の決意が揺らいでいるのも事実だった。剣を強く握り直し、息を吐いて覚悟を決める。

 全力で地面を蹴り、雄叫びとも悲鳴ともつかないような大声をあげながら、勇者は悠然と構える魔王に斬りかかった。

「いらっしゃい」

 ふと、魔王が喋った。異形の物である魔物の王が人間の言葉を話したのだ。

 何だ? そう問い返したかっただろう。だけど勇者の足は何故か止まってくれない。彼の体は魔王に迫り、両手に持った大剣を目一杯に振り上げる。

「君達のためにクッキーを焼いたんだ~。私の手作りなの」

 どうしてだろうか。勇者には魔王の姿が全く視認できない。黒い影が何かを差し出し、声は水の中にいるようにボヤけている。その声を打ち消すように、彼はただ大声をあげていた。

「えへへ、結構上手でしょ? よかったら勇者君に――――」

 直後、大剣が魔王を一刀両断した瞬間、全てが終わりを迎えたように闇に飲まれた。

 ひどく長い夢を見ていた気がするような目覚めだった。

 鳥のさえずりや、瞼を閉じているにも関わらず瞳に届くわずかな光から、世界が既に朝を迎えているのが分かる。

 だが、見慣れた天井の染みを見つめ続ける男には起きようと体を起こすのが困難であった。というのも、これから何が起きるのかを彼が大体察しているからなのだが。

「はぁ、嘘だろ……」

 男の口から思わずため息が出る。この朝を迎えてしまったことを認めたくないというように、薄っぺらい毛布を頭までかぶり直した。

 ひとまず、なぜ彼が朝からこんなに憂鬱なのかを説明しよう。

 彼は昨日までただの村人だった。しかし、それがどういう訳か、今日から旅に出ることになったのだ。それもとびきりドギツい任務を背負って。

 その任務の内容は『現在戦争になっている魔物達の王、魔王を討て』というもの。

 まずこの任務内容からして異常で無謀なのだが、そこで何故かごく普通の農民だった彼が選ばれた。

 何故。この大役を押し付けた張本人、人間全てを統べる我が国の王、デンガル国王に問い詰めたら、「赤い瞳をしているからだ」と返された。

 当初、勇者にはまるで意味が分からなかった。当然断ったし、断固として受ける気もなかっただろう。

 しかし、最終的に諸々の事情から行かないわけにもいかなくなってしまう。本当に不本意だが、それだけの理由ができたのだ。

 さて、そこで彼の憂鬱の原因となる事象が現れるのである。

 結論から先に言うと、現在の日付から八日以内に、勇者は死ぬことになる。突飛で信じがたい話だが、これは紛れもない事実だったのだ。

 死亡すると時間が巻き戻る。ろくな呪文も使えないただの村人である彼は、そんな訳のわからない現象に巻き込まれてしまっている。

 何十回死んだだろうか。彼には八回辺りから数える余裕も無くなっていた。慣れない苦痛に耐えながら魔王を討伐しに行くことだけを考えていたからだ。

 逃げる事は許されない。と言っても、そんな事を彼は考えたこともないが。できたとしても仲間を見捨てるわけにはいかない。

 ともかく、要するに、彼は選ばれてしまったわけである。勇者とかいう、英雄になることを義務づけられた存在に。

「……とにかく、もう一回初めからだ」

 誰が聞いてるわけでもないのに苛立った声でそうこぼすと、気だるげに体を起こす。首にかけたままだったロケットを握りしめて、ベッドからモゾモゾと体を絞り出した。そろそろ準備をしなくてはならない時間だ。

「忘れるな。2561、ヘレン、レイ……。本、猫、妹……。イズ、ネメス、エル……。大丈夫だ。今度はうまくやってみせる」

 頭痛を堪えるように頭を手で押さえながら、ぶつぶつと呟いて部屋を出る。今日から人類を救う旅に出る男を迎えてくれる家族はいない。

 寝室同様、居間は小綺麗だった。あえて悪く言ってみれば、生活感がない。中央にテーブルと椅子、壁際に本棚があって、数冊だけ雑多なジャンルの本が収まっている。

 友人に「殺風景な部屋だ」と評された時も、彼は「家具を充実させる金なんてないのだから仕方がない」と無愛想に返すばかりだった。

 狭いわりに広く感じる居間を通ってキッチンへ向かう。男はのんびりした動きで保存してあった肉を焼き、自分で育てた野菜を添えて少し豪華な朝食を作った。

 料理を持って先ほどの部屋へ戻る。テーブルの上には慣れない字で書かれた遺書が置いてあった。昨日に彼が書いた、唯一の友人へ宛てた手紙だ。万が一の事を考えて書き残しておいたのだが……。

「これが必要になってくれた方が、まだいくらかマシだったろうにな」

 半ば自棄になりながら破り捨てる男。頭を乱暴に掻き、椅子に腰かける。

「失敗したら八日後、また死ぬ。また……」

 不意に駆け上がる吐き気を無理やり抑えこむ。嫌な記憶と予感を頭の隅へと追いやり、食事に集中することにした。

 貧乏人には貴重な肉をいくつかに切り分け、震える手で口へ運ぶ。町で買った肉は固くて食べづらかったが、友人に貰った胡椒のおかげで臭みはない。

「もうこの味にも飽きてきたな」

 それでもできるだけ味わって食べ終えると、あらかじめ用意してあった服に着替え、必要な荷物をささっと準備する。

 玄関近くの壁に掛けてあった鍵を取り、男は深く息を吐いてノブに手をかけた。

「これで、終わらせる。そろそろ死ぬのにも飽きてきた」

 レンガ造りの家を出る瞬間、挨拶代わりにそう小さくこぼして、勇者は再び冒険へと繰り出した。

 

《感想》

一部目からいきなりバトルシーンを投入したところに管理人はセンスをビンビン感じ取りました。
この小説は死に戻り小説のような感じなのですが、普通に何の構成も考えず小説を書けば、王様に呼び出されるシーンから始まり、その後最初の死を経験することになります。しかし、この小説の構成は少し特殊ですでに何度か死に戻りした状態で物語がスタートするのです。
つまり構成が非常に工夫して作られているということですね。
構成が素晴らしくよくできた作品だと思いますので是非ご一読お願いしますm(__)m

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