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《作品タイトル》

どうやら俺は犬らしい

《作品情報》

作者“ふりすくん”

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あらすじ

前世の罪は今世の罪。

前世の罪は今世の貴様が背負い、そして滅ぼせ。

閻魔様が俺にそう言った。

俺ーー吠江野(ほえの)犬次(いぬつぐ)に閻魔様はそう言った。

はっきり言えるならばふざけんな!

でも言えなかった。

言えなくなった……。

そんな感じで俺は前世の罪を背負うことになった。

ジャンル

ローファンタジー〔ファンタジー〕

キーワード

残酷な描写あり  日常 青春 異能力バトル ラブコメ ギャグ 現代 低レベルな下ネタ コメディ もはやローコメディ

掲載日  

2018年 04月06日 16時11分

《第一話特別掲載》  

 1

 前世の記憶を保持している人間っているのだろうか?

 この疑問は、恐らく一生、答えを見つけられないかもしれない。

 訊ねたとして——仮に訊ねたとして、まともに応えてくれる人がいるとも思えない。そもそも思わない。

 こんな質問すれば、引かれてしまうかもしれないし、まともに応えてくれる人がいないと思うのなら、こんな質問をするべきではなかろう。

 あるいは、近しい存在や親しい存在——家族や親友——ならば応えてくれるだろうか?

 仮に応えてくれたとしよう。

 こんな質問に真面目に応えてくれたとしよう。

 しかし、それでもやはり、ほとんどの人は、ノーと答えるのではないだろうか?まあ訊いてもいない奴が何を言っているのか、って話でもあるが。行動もせずに、文句を言っても仕方あるまい。文句を言っているつもりはないが。

 だからといって、イエスと答える人がいたらどうするのか? それはわからない。

 へえ、と頷くだけかもしれないし、まことに無礼ながら鼻で笑ってしまうかもしれない。

 俺——吠江野ほえの犬次いぬつぐという人間はそんなやつである。

 いい加減で、いい加減に適当に生きているし、生きてきた。

 当然ながら、俺はまだ存命であり、そしてだからといって、すでに五十を過ぎたおじいちゃんというわけでもなく、所詮はまだ十五年しか生命活動をしていないのだが——所詮は高校に入学して、まだひと月すら経過していないのだが。でも、生きてきたし、生きている。

 人生はまだまだ続くのだろうと思っている。

 そうは思っていても、あるいは思っているからこそ、明日には終末を迎えるのかもしれない。人の生命がいつ終わるのかは、結局誰にもわからないのだから。軽い生命がないことは重々承知しているが、人が死ぬということは——生命が亡くなるということは、言葉は悪いかもしれないが、しかし呆気ないと言わざるを得ないのだろう。

 生命が亡くなり——魂が無くなる。

 それが世界の流れと言うのか、あるいは世界の在り方というのか。

 もしくは理というのかは、浅学な身である俺にはわからないが。わからないけれど、まあ感情的に言葉を言わせてもらうならば、ふざけんな。である。

 ふざけんな! としか言いようがない。少なくとも俺には、だけれども。

 だからといって、例えばゲームのように、人間に、個人にひとりひとり、HPゲージみたいなものがあって、常に自分の死期を残量で確認できる方がいいのか、と問われたらそれは絶対に嫌だったりするのだから、ただのわがままと言われても仕方のない言い分ではあるのかもしれないが。

 結局、人間のみならず、この世に生きるありとあらゆる生き物はいつ終末が訪れても究極的にはおかしくないのだろう。

 生き物は死ぬために、生きているのだろう。

 そんな悲しい生きる理由は断固嫌だが。

 武士道とは死ぬことと見つけたり、なんてことは俺には思えない。

 生きてこそ。である。

 ……話を戻すが、前世の記憶。

 それは俺にはないものであり、忘れているのか、元々存在していたのかすらもわからない。前世が居たのかもわからない。

 もし。もしも——前世の自分が大罪を犯して、その罪を償いもせずに、その罪を滅ぼさずに、ぬけぬけと、しゃあしゃあと生まれ変わったのなら、転生したのなら、その罪はどうなるのか?

 転生後——生まれ変わったあとの人物にその罪が引き継がれる。というならば、およそ納得は出来ないが、わからなくもない。

 身に覚えのない罪を引き継ぐというならば、納得は出来ないがわからなくもない。

 身に覚えがあれば——記憶さえあるのならば納得してもいいさ。

 前世の記憶があれば——な。

 2

 ふと、目が覚めた。まあ、睡眠からの目覚めというのは、ほぼほぼふと目が覚めるものだろうが、ふと目が覚めた。そして目覚めてはいるが、目は開けていない。

 というか、寒さを感じて目が覚めたという感じだ。春なのに。ぽかぽか陽気なのに。

 四月七日。土曜日である。

 非常に過ごしやすいぽかぽか陽気なので、当然ながらまだエアコンを入れるには早すぎるのでエアコンは入れていないから、寝冷えした、というわけではなさそうだ。

 ならば今朝は冷え込んでいるのだろうか。にしても寒い。ここは地方の田舎ではあるが、北国というわけではないので、四月にここまでの寒さを感じたことはない。人も気温も暖かい地方の田舎ではあるが、現在の体感ではいっそ雪でも降っているのではないだろうかと思うほど寒い。

 それくらい寒いのだが、残念なことに掛布がない。夕べはそこそこ暑かったこともあり、そんな陽気の夜にはノー掛布主義という存在価値がわからない主義が仇になったかたちだ。だが幸いに、寝巻きジャージの上着がベッドのどこかにあるはずだ。昨夜、横になってから横になったまま脱いだから、確実にあるはずだ。

 手探りで探す——が、目は開けない。

 暗中模索だぜ。

 自ら目を瞑り、暗闇を手探っているので、暗中模索と言っていいのかは審議が必要かもしれないし、必要ないかもしれない。ジャージの上着が必要なのは間違いないが。

 今日は休日だから、目覚ましはセットしていない。目を瞑っているので、一体今が何時なのかはわかりようもないことだが、感覚が——あくまで感覚的にまだ起きる時間ではないと告げている。

 俺は特に感覚が優れているわけではないのだが、本能が告げている。

 まだ起きるなと、告げ口してくる本能。

 本能に忠実に生きるがモットーなのだ。

 自身のモットーを紹介したところで、上着が見つかった。上着かどうか確認したわけではないので、上着のようなものを見つけた。まあ上着だが。

 そのまま横になったまま、袖を通す俺。

 ぶっちゃけ裏表すらわからないのだが、そんな細かいことはいちいち気にしないのである。気にして目を開けたくないのだ。

 開ければいいじゃん、と、第三者からみたら普通思うだろうし、言うだろう。俺が第三者だったなら思うし、きっと言う。

 だからといって開眼する理由にはならない。なんというか、わかりやすくいうならば、ショボい意地である。

 開けても、落命するとかそんなリスクがあるわけじゃあないのだが、それでも開眼はしない。しないというか、開眼したくない。

 こんなショボい意地を頑固に張ったところで、自分の将来が明るくなるわけではないのだろうが、それを言ったら将来が暗くなることもあるまい。

 現在の視界は暗闇でしかないのだが……。

 こんな意地とよべないような意地を張ったって意味がないことは承知している。わかっているのだ。わかっているのだけれども、無意味な意地に満足しているし、誰に理解されないだろうけど、個人的に納得してやっているのだ。

 満足して、納得しているからいいんだ、と自己満足しているのさ。

 馬鹿みたいだが。

 自分を俯瞰的に見てみたら、馬鹿すぎて、滑稽すぎて大笑いしそうになったが、堪えた。何時だかわからないが、朝方 (?)に部屋でひとりで大笑いするのは、流石に怪しいし、そんな大声を上げたら隣室にいる妹に、引かれるだろうし、キモがられるだろうから堪えた——というより、単にやめただけなのだが (ただでさえ、妹は俺を低く見ていると思うので、低く見られながら引かれるとか御免なのだ)。

 さておき、重大な問題があるのだが、どうしようか?

 普通におしっこしたいんだけど、どうしようか?

 生理現象を我慢する意地はないのである。しかし参ったな。目が覚めたあとに、普通にトイレなんて行ったら、それは普通に覚醒してしまったようなものじゃないか。

 ここまで思考が——無駄な思考が?——働いてる状況で今更覚醒とか何を言ってんだ? と、思われるかもしれないが。

 でも目を開けたくないしなあ。参ったね。

 このまま一か八かで我慢して二度寝することも考えたが、一か八かで万が一でも寝ションベンなどしてしまったら、と考えると、我慢するのは得策とは言えまい。流石に高一にして、寝ションベンは駄目だろう。中三ならセーフってわけでもないが、高一の寝ションベンは駄目だろう。

 笑い話にもなるまい。

 ただ普通に引かれるだけだろう。

 寝ションベンを隠蔽することだってきっとやってやれないことはないのかもしれないが、それは例えば友達とかになら。という話であり、家族に隠蔽するのは困難極まる。

 家族にバレたら当然妹にもバレるわけなので、それだけは避けたいのだ。ただでさえ、兄の威厳など皆無な状態なので、お漏らしなんてした日には、ギリ 『兄ちゃん』と呼ばれている今なのだから、お漏らしして、隠蔽を企てたことがバレた日には 『兄ちゃん』と呼ばれることもなくなることだろうし、新しく不名誉なニックネームを頂戴することになるかもしれない。

 流石にそれは我慢ならない。

 おしっこも我慢出来ないし。

 しかし困ったな。ここで開眼するのも嫌なのだ。せっかく意地を張っている最中なので、ここで開眼するのも我慢ならないのだった。

 トイレに行きたい。目は開けたくない。

 だから俺は目を閉じたまま、トイレに行くことを決めた。決意して、決定した。

 現在地は吠江野家の二階、犬次ルームのベッドの上から、トイレまでは、イメージ的には八歩でたどり着くはずだ。部屋を出るのに四歩。廊下を四歩の単純な計算でたどり着く (はずだ)。

 しかしこれはあくまでイメージ的にという計画だし、そもそも目を開けていれば、というイメージなのだが——まあ、見えていなくたって歩数に誤差は出ないだろう (たぶん)。誤差が出たとしても、半歩くらいだろうと思う (たぶん)。

 まだ僅かながらに膀胱には余裕がかんじられるので、確認も兼ねてシュミレートしよう。

 備えあれば憂いなしってよくいうもんな。

 まずベッドから降りるのが何よりもやるべきことである。だが、この時腰を中心にして、ベッドの中心から降りてはならない。足元の方から降りるのがファーストミッションだ。

 もし、腰を中心に、ベッドの中心から降りたならば、一歩目からテーブルにすねを強打する。弁慶の泣きどころと呼ばれる脛を強打なんてしたら、かの弁慶すら泣くといわれている脛である——当然、目を開けている場合ではないくらい痛いだろう。何よりも恐ろしいのは、脛の強打により涙と一緒におしっこが出てしまうかもしれないという可能性が恐ろしい。

 だから足元から、より安全を考慮するなら、左手を壁 (正確にはクローゼットの扉)に添えながら立ち上がる。そのまま、左手もそのままにして、前進する——三歩前進。そして立ち止まってから、右手をゆっくり伸ばす。思いっきり伸ばしたら、ドアに掌底を食らわすことになってしまうため、ゆっくりだ——ゆっくり伸ばしドアに右手を触れさせて、スライドドアをスライドさせてドアを開き、一歩前進。これで部屋から出る四歩を終了させる。

 よしここからは、後半だ。Bパートだ。

 Bパートは廊下だ。左手は頑なににそのまま (壁に添えたまま)にして、左に歩く。途中に妹の部屋のドアに触れる必要があるが、触れるだけならば問題はあるまい。ノックするわけでもないし (添えてるだけだし)。

 廊下も同じく三歩前進だが、ここは気持ち大股で三歩だ。そして先程と同じく右手でドアに触れる。だが今度は引き戸なのでドアノブを掴む必要がある。そしてそして、同時に引き戸で足の小指をぶつけないように注意するのも忘れちゃあいけない。目を閉じた状態で注意するのも難しい局面だろうけども、意識をするだけで注意だ。何事も意識しなければ危険な世の中である。家の中も世の中の一部だ。

 あとは、トレンド (?)にならって座りションをすれば完璧だぜ。立ち上がれば勝手に流れてくれるセンサー式の便座をフル活用して、個室から退室すればいい。

 帰りはそのまま、来た手順を逆にすればいい。壁に触れる手を右手にすればいいだけのことである。

 ふっ。

 簡単って書く方が簡単だ。

 そりゃあそうだろう……。

 シュミレートは完璧だぜ。あとは行動あるのみ。

 俺の膀胱もシュミレートタイムに時間を割いたので、だいぶパンパンだ。急がば回れなんて余裕はないのだ。目さえ開けていれば、脱兎の如くトイレに駆け込みたいくらいだぜ。

 だが、この時俺は考えるべきだったのだろう。しょうもない (トイレに行きたいという理由はしょうもなくないが)シュミレートタイムに時間を消費するのならば、その時間を使って考えるべきだった。

 くだらない考えに思考を働かせるのならば、もっと不思議な点について掘り下げるべきだった。

 だった。

 過去形になってしまってからでは既に遅いのだが——後悔先に立たずとはまさにその通りである。

 つまり考えるべきだったのだ。

 なぜ、春季の朝方に、まるで雪が降ったかのように寒いのかを。

 考えるべきだった。

 考えるべきことを考えずに、考えなくてもいいことを考えた。これが失敗である。

 まあ失敗なんて、既に数え切れないほどしてきたつもりだ。十五年で既に数え切れないほどの失敗をしたさ。どんな失敗だったかをいまいち覚えていないので、反省のしようもないが。それも失敗だろう……。

 結果を先にいうと、俺はトイレに行けなかった。行かなかったのではなく、行けなかったのだ。もちろん、足を挫いたわけでもないし、当然ながら途中で漏らしてタイムオーバーになったわけでもない。

 そんなわけはないが、わけはある。

 わけはわからなかったが。

 ベッドから立ち上がろうとした瞬間、腰を浮かせる寸前で、落っこちた。ベッドから落っこちたわけではなく、ベッドごと落っこちた。

 こんなことを言うと、まるで俺んちがぼろ家で、部屋の底が抜けたみたいに勘違いされてしまうかもしれないが、そうじゃない。

 ふわっと浮遊感を感じ、落下してるんだなあ今俺は——と、ゆっくり考える余裕があるくらい落下した。

 どこに…………?

 わからなかった。

 なにせ、ショボい意地を貫き通した俺は、想定外の浮遊感もとい落下に臆することなく、目を瞑り続けたのだ。ヒビって目を瞑ったわけじゃないので、くれぐれも勘違いしないように。

 俺の決意の強度は屈強だったのだ。まったく、俺ってやつは頑固だぜ。

「カチカチの決意だぜ。ふははは!」

 言ってみた。言って笑ってみただけだ。

 しかしなんだか凄まじいイレギュラーが起こったみたいなので、いよいよ俺は開眼しようか悩みつつの、笑いだったのだが、

「おや、寝言でしょうか?」

 と、謎の声がした。

 誰の声だ? 男性の男声だと思われるので、妹でも、母さんでもないことは確かであり、だからといって父さんかと言えばそれも違うと言わざるを得ない。

 本当に謎の声だった。

 普通にヒビって目を開けたくなかった。

 なんだなんだ? もしかして、家の中も世の中の一部だ、とか知ったような口を利いたから、危険な世の中の洗礼だろうか? 知ったような口を利いた若僧に、世の中の怖さをわからせるために、世の中が気を利かせたのだろうか? だとしたら俺からしたら気が利かないと思わざるを得ないけど……。

 つーか、そんなわけねえよ。

 どんな世の中だ。

 迷惑だ。

 いや冷静に考えればきっとあれだ。父さんの友達とかそんな人だろ、たぶん。ここで落下した事実から目を背けてる時点で冷静ではないと思われるだろうし、ぶっちゃけ全然冷静になんてなっていないのだ。

 しかしこのまま狸寝入りを決め込んでいたって、事態は進行すまい。それに声の雰囲気はなんだか優しそうな声たった。俺に危害を加えるつもりなら、既にぼこぼこにされていてもなんら不思議はないのだから、ぼこぼこにされていないのだから、きっと無害と思い込もう。思い込めば、なんだかんだどうにかなる (といいなあ)。

 なので、俺は目を開ける勇気は無かったため、結局、瞼を閉じたまま、

「えー……、と。誰くん?もしくは誰さん?」

 と、言った。

 訊き方がちょっとおかしいかもしれないが、ご愛嬌ってことで勘弁して。

 俺の言葉を受けた何者かは、

「なんだ。起きていたんですね。それなら目を開けてくださいよ」

 と、開眼をリクエストしてきやがった。

 ふふ。まあ仕方あるまい。

 リクエスト頂いたとあっちゃあ、この吠江野犬次は開眼せねばなるまい。

 俺はとうとう開眼した。くそ眩しい。無駄に明るいな畜生。

 開眼した俺を見つめていたのは青年だった。年齢は不明たが、なんだかスタイリッシュな青年だった。スタイリッシュな青年なので、というか、イケメンだったから、嫌いだと思った。

 あまり他人を嫌うことはない俺ではあるのだが、イケメンは例外なく嫌いである。だって卑怯じゃね? イケメンって? ズルくね?

 息してれば女の子が寄ってくるんでしょ?

 そんなのズルいじゃないか!

 そんな俺のねたみにも似た (というか僻みそのもの)胸中は、しかし俺だけのものなので、青年には知り得ないから文句を言われることもなく、

「初めまして、吠江野犬次殿」

 と、言った。

 殿って……。

 かつて呼ばれたことのない呼ばれ方で呼ばれたから、そんなどうでもいいところを気にしてしまった。

 ん?

 なんでこの青年は俺の名前を知っているのだろうか? 俺はお前のようなスタイリッシュな青年は知らないのだが。

 またもや思考がブレた俺だったのだが、次の青年の言葉には、首を傾げることしかできなかった。

 青年は言った。

 僕は——、と。

 なんだか執事みたいな片腕を胸の前に置いて、一礼をしながら、

「鬼です」

 と、言った。

 微笑みながら。

 鬼ですって言ったのだった。

「……………………」

 うわあ。鬼ですとか、中二病のベクトルが変な方向に向いちゃった、痛い青年なのか。と、なんだか可哀想に思えた。イケメンってことで、第一印象は嫌いでしかなかったが、可哀想って思ってしまったので、ちょっとだけ、話に乗ってあげようって思えた。残念な青年を前にして、どうやら俺は優しくなれたようだった。

「へえ鬼なんすか? マジっすか? 俺、生まれて初めて鬼を見ちゃいましたよ。でも言われてみればわかるなあ。鬼っぽさが底知れないっすもんねえ。ところで、何鬼なんすか?」

 たぶん優しさと、馬鹿にしたいという気持ちが混ざった結果、こんなコメントしか言えなかった。

「鬼っぽさと言われましても、犬次殿。僕は鬼そのものですからね。何鬼というのならば、僕は赤鬼ですよ」

 笑ってやるべきなのだろうか?

 鬼そのものって、受けるー。とか言ってやるべきなのだろうか?

 それはもういじめ口調になる事が避けられないかもしれないが。

 さすがに初対面(だよな……?)の赤鬼 (?)に対して、あんまり舐めた口を利くのも失礼だと思ったので俺は、「赤鬼なんすか? あの有名な? 」と、適当に持ち上げるようなことを言ってから、「でも、あれっすね。赤の要素全然ないっすねー」と、思わず本音を零してしまった。

 まあそれも仕方あるまい。だって、赤鬼とか自称しているくせに、この青年は黒スーツをスタイリッシュに着こなしているのだから、ついつい言ってしまうのも致し方ないだろう。

「ちゃんと僕は赤鬼ですよ。赤いパンツを穿いている鬼。赤鬼ですよ」

「……………………」

 こんなことを思うのは、青年の独自の世界観を否定してまうことと同じだと思うのだが、あんた、本当にその設定でいいのか。という思いを禁じ得なかった。

「なんなら、きちんと証明するために、お見せしましょうか?」

 イケメンのパンツとか超どうでもいい。

 イケメンのパンツなんて見たら、反吐がでるぜ。

 という言葉を呑み込んで、俺は、

「いや、見たくないっす。見たくないんで、トイレを貸してくれません?」

 と言った。

 反吐がより先に、尿が出そうなのだ。

 反吐を吐く前に、尿道を労わりたかったのである。

 よく我慢している、俺。

 落下でびっくりしたから、不幸中の幸いで尿意を忘れていたのだった。でも思い出したからには、トイレに行かなければただの不幸になってしまうのだ。不幸になるのは俺オンリーだからな。

 俺の要請に、青年は、「こちらにどうぞ」と、トイレまで案内してくれた。

 普通に優しい青年だった。

 トイレのドアの前で「こちらになります。ごゆっくりどうぞ」と、残して、青年は元の場所まで戻っていった。

 俺はありがとうと言ってから、急いでドアを開けた。

 くそ広いトイレだな……。

 たぶん六畳くらいはあると思われるが、今はトイレの紹介をしている余裕はないので、普通に走って便器を目指し、直行した。

 俺の人生の中で、トイレの個室で、便座までランする人生がまさか訪れるとは、人生とはなにがあるかわからないものだということを、改めて思い知ったぜ。

 そしてここはどこだ!?

 3

 という疑問は、一旦棚上げせざるを得ない。

 なにせ今俺は放尿中なのである。

 思えばよく我慢したぞ、俺。よくやった。

 我慢をしたあとの解放感はなんとも言えないし、何よりも得難い心地よさだ……。

 まあ、俺の解放感を説明していても仕方がないので、ここで俺がベッドごと落ちてきた場所、着地点あるいは落下点について説明しようか。

 俺が開眼して、居た場所——落下地点でも着地点でもどちらでも構わないが居た場所は、部屋だった。自室ではなく、知らない豪勢な広い部屋である。

 このトイレも無駄に広いが (広過ぎるくらいだ)、知らない豪勢な広い部屋はもっと広い。二十畳くらいあるのではないだろうか?と、思うほど広い部屋で——どのくらい豪勢かと言えば、RPGに出てくる王様の自室くらい豪勢だった。

 デカいシャンデリアにカーテン付きベッド。赤い絨毯じゅうたんお洒落な丸テーブル (大きめ)。そしてイメージ的には西洋風の城かよ、って突っ込みたくなる開き窓。

 まさに初見の物だらけだった。俺が腰掛けていた俺のベッドが場違いにもほどがあったぜ。

 そんな部屋に住んでる (?)青年——彼については目下不明である。なにせ五分すら会話していないからな。トイレに同室されても嫌だし。

 今更だけど、彼の設定で鬼のイメージカラーというか、配色というか、何というかカラーリングが決まるのならば赤鬼以外の日もあるんだろうか?

 青の日は青鬼で、黄色の日は黄鬼。

 もうそれって、好みじゃねえか。

 なんだか、色を判断しにくい色だった日には、自称する色に困りそうな設定だなあ。似ている色なんて馬鹿みたいにあるわけだもんなあ。

 ベージュ鬼の日だってあるかもしれない。

 くそどうでもいいが。

 じゃあ黄土鬼とか、茶褐鬼とかの日もあるんだろうな……。

 やっぱりくそどうでもいいが。

 まあ、こんなことを考えている時間があるのならば、ここはどこなのかを考える方が当然だと思うし、賢明な判断なんだろうけど、俺は夢オチを願っているので、考えたくないことから目を背けているのだ。

 逃げ腰なのだ俺は!

 嫌な事は嫌でしかないのだから、嫌な考えは嫌なので、しないのである。

 そもそも俺の考えでは、わからないことをわかっていない奴が延々に思考したって結局はわからないままだと思っている。

 そんなのは、習っていない漢字を読めないのと同じだぜ。

 だからこんなわけのわからないことに対する対処法なんて習っていないのだから、俺は考えるのをやめたのだ。

 賢い。俺賢い。

 そんな風に自分を褒めていても仕方がないので、目先の不安——尿意——がなくなったのだから、いつまでもトイレにこもっていてもラチがあかないので、俺はトイレから退室した。

 トイレから退室して、再び豪勢な部屋に戻ると、青年がおしぼりをくれた。

 なんでこんな接客みたいな接し方をしてくるのか全くもって見当もつかないが、差し出されたおしぼりを突き返すほど俺はトゲトゲしていないので普通に「どうもっす」と軽く礼を言って受け取った。

 暖かいおしぼりだった。

「……………………」

 んー。おしぼりが暖かいおしぼりだろうが、冷たいおしぼりだろうがどっちでもいいんだけど、あれ? 夢って温度を感じることあるんだっけ?

「そういえば、犬次殿。僕に敬語を使うのをやめて貰えますか? 使われる機会が少ないので、敬語を使われるのが苦手なんですよ」

「え、うんわかった」

 拒否る理由がなかったのですぐ肯定した。ならばと俺にも敬語を使うのをやめてくれよと言ったのだが「これが僕らしさなので」という理由で断られた。

 それが彼らしさなのかは、知らないし興味もないので適当に「へえ」としか頷けなかったが、どうでもいいから、どうでもよかった。

 どうでもよくないのは、ここがどこなのか? という疑問なのだが……。

「そういえば犬次殿には、まだここがどういう場所なのかを言っていませんでしたね」

 と、青年は言った。

 ここはですね——、と。

「地獄です」

 外も真っ暗でしょう?

 そんな風に言いながら、窓に手を向けた、青年。

「……………………」

 地獄とか、そんなの信じれるわけないじゃん。

 たしかに外は真っ暗だけども、夜かもしれないじゃないか。

 だから冷静に俺は、

「え、まじ?」

 と、言う。

「ええ。マジですとも、犬次殿。貴方はこの度地獄に堕ちました。いらっしゃいませ」

 いらっしゃってねえよ。

 俺を帰せ馬鹿野郎。

 地獄とか……。

 え、俺死んだってこと??

 マジ??????????

 

 

《感想》

この小説に関して、どうやら作者様の処女作のようですのでそれも考慮して感想を書かせていただきますね!(^^)!

この作者様は西尾維新先生に影響されたのか(真相は神のみぞ知る(‘◇’)ゞ)最初のうちはかなり特徴的な文章が続きます。

まさにThe 一時視点小説! といった感じですね(^▽^)/

ダッシュを多用しているところも特徴的と言えるでしょう(#^.^#)

かなり変わった言い回しをしているため、読んでいて少し面白いところがありました(笑)

ただ言い回しが独特すぎるゆえに伝えたいことを伝えきれていないような気がします(‘◇’)ゞ

一つのことを言い表すのに多くの言葉を使いすぎているのでしょうm(__)m

後半になるにつれそのようなクセはだんだんとなくなっていきますが、はじめのうちは独自ワールド全開ですので好きな人にとってはたまらないかもですね(^▽^)/

最初と最後とで大きく文体が変化していきますがそれは作者様が成長していっている証です。

発想の面白い方ですので次回作に大きく期待しております( ^)o(^ )

戦闘シーンがまだまだ苦手みたいですので、今後どのような戦闘シーンを執筆していくのかも注目であります。

 

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