『このくちづけを永遠に――ムーンライトノベル』おすすめweb小説紹介サイトラノプロ
《作品タイトル》
このくちづけを永遠に
《作品情報》
作者“結城亜美”
あらすじ
ジョージ・マクレガーはILO(国際労働機関)の工作員であり、企業家であり、レーシングドライバーでもある。
彼はマクレガー財団の御曹子でありながら国際犯罪組織テンペストと戦う為にスコッテシオファミリーのドンとなり個性的な仲間達と共に決死の戦いを挑む。
謎の毒剤クオレトールの秘密とは……。
そして、ジョーの謎の過去と秘密とは……。
愛と憎悪を巻き起こしながら長き戦いは今始まっていく。
ジャンル
キーワード
残酷な描写あり 男達 男達の愛憎 男達と女達の愛憎 BL的要素あり アクション 冒険ミステリー 神と悪魔の戦い 前世 ファンタジー
掲載日
2018年 03月30日 16時15分
《第一話特別掲載》
序章血の粛清1
その日────。
島は、むせかえるような暑さに包まれていた。
「二人してどこへ行くのさ?」
お気に入りのプールのような噴水で、涼をとっていた私は父の部下であるトニーとラルフが車に乗り込もうとしている所を目にすると彼らに駆け寄った。
「坊っちゃん、ここに居たんですか?
旦那様が捜していましたよ」
トニーは私の頭を撫でながら笑った。
「父さんが?」
私はトニーの顔を見上げた。
「今夜のパーティーは坊っちゃんの八歳の祝いの誕生パーティーじゃないですか!きっとプレゼントの話ですよ」
先に車に乗り込んだラルフも、開け放たれたサイドウィンドウから身を乗り出すように、笑顔を向けた。
「プレゼント?僕が欲しいのはサルディニア産の馬だよ。そんなもの貰える筈ないよ………」
私を見つめる二人に肩をすくめて笑ってみせる。
「さあ………、それはわかりませんよ」
何事か意味を含ませたようにニヤつきながら私を見つめ返すトニーに私は小首を傾げながらも言葉を続ける。
「ねえ………、それよりさ。二人してどこへ行くの?夜までには帰って来る?」
「私らは旦那様の言いつけでこれからそのサルディニアまで行くんですよ!」
体を屈めトニーは笑いを堪えるように声を詰まらせ私の耳にそう囁いた。
「え?サルディニア?」
トニーの言葉の意味がわからず私は聞き返した。
「あの馬を引き取りに行くんですよ!坊っちゃん!」
トニーは私にウィンクするととうとう笑い出した。
「本当!?トニー!」
私は大声をあげるとトニーの首にしがみついた。
「そうですよ!今日からあの馬は坊っちゃんのもんだ!」
トニーは笑いながら私を抱き上げた。
「アハハ!すごいや!」
日焼けしたトニーの顔に擦りつき私も笑い続けた。
ラルフは、そんな私達のやり取りを笑顔で頷きながら見つめていた。
「さあ!坊っちゃん!私らは急いで行って来ますから!早く旦那様の所へお行きなさい!」
トニーは私の体をそっと地面へ降ろすともう一度いとおしげに私の頭を撫でた。
「わかったよ!トニー!二人とも早く帰ってきておくれよ!」
二人に大きく手を振りながらエスタ島で最も美しいと言われている白亜の屋敷へと向かって私は走り出した。
「あんなに嬉しそうな顔をしちまって………。可愛いよな………」
車に乗り込み傍らの相棒にトニーは笑う。
「お前さ………、旦那様より先に坊っちゃんに話した事が判ったらドヤされるぞ………」
腑抜けた表情で笑うトニーに呆れ顔をしつつラルフはエンジン・スターターを回した。
「え!?ああ………、そうだよな………。まあ………、仕方ない。坊っちゃんの為だ。旦那様の雷のひとつやふたつは、覚悟するさ!さあ、急ごうぜ!」
溜め息まじりに笑ったトニーの言葉に頷くとラルフはゆっくりとアクセルを踏み込んだ。
二人の乗った車は広大な敷地内の道路を進み屋敷から離れて行った。
私との別れが来る事など想像もつかぬままに──。
《感想》
この作品は、ラノベというより、純文学に近いと思います。と言うのも、魔法、ファンタジー要素がほぼ皆無なのです。こういった作品は私自身あまり読まないので、読んでいて新鮮でしたし、またこうして感想を書くのも新鮮であります(^o^)
さて、この作品の魅力は何かと言いますと、やはり1番は、ファンタジー要素無しで、ここまで作品の設定、キャラ設定などを作り込めている事です。一般的には、ファンタジー要素が絡んでくる物語がこのサイトには多いです。その方が書きやすく、物語も面白くしやすいからだと思います。ファンタジー要素などが絡む作品が「王道」なら、この作品は「邪道」でしょう。しかし、邪道ならではの良さもあり、読んでいてとても今後の展開が予想出来ず、どんどん読み進めて行けます。少し長めですが、読んでみる価値は十分にあると思います。by係T