『八百万遊戯《ヤオヨロズユウギ》』おすすめweb小説紹介サイトラノプロ

おすすめ小説紹介

《作品タイトル》

八百万遊戯《ヤオヨロズユウギ》

《作品情報》

作者“古淵 寮”

作者のマイページ

作者のツイッター

 

あらすじ

ある日、九十九玲仁のスマホにインストールされた謎のゲームアプリ「ヤオヨロズ」。起動したことにより「巫」となった彼の前に、忠誠を尽くすという激レア美少女神「天照大神」が姿を現す。突如始まる美女との同居生活と巫同士の熾烈なバトル。誰よりも安穏を愛するはずの玲仁の日々は少しずつ、確実に、波乱に巻き込まれていく――。

【ヤオヨロズ 攻略サイト】はこちらから:
https://www65.atwiki.jp/yaoyoro

ジャンル

ローファンタジー

キーワード

現代 神 ボーイミーツガール 能力バトル ゲーム バトル異能 カクヨムオンリー

掲載日  

2017年12月9日

《第一話特別掲載》  

 その怪物は、鋭い眼光で九十九つくも玲仁れひとをにらみつけていた。

 き出しの牙からしたたる唾液に、隆々とした四本の太い腕。毒々しい紫の血管は浮き上がり、禍々まがまがしさが全身からあふれている。一筋縄ではいかない相手だと嫌でも思い知らされる。

「もう――後には引けない」

 覚悟を決めた玲仁が低く静かな声でつぶやき、自身の人差し指を目の前にかざす。指先はゆっくりと――目の前の「コマンドボタン」に触れる。

「奥義・エターナルフラッシュ!」

 仰々しく、その技名が画面上部に映し出される。

 光の線が怪物の中心へと収束し、やがて凄まじい衝撃の爆発が広がっていく。玲仁はその爆風を受けながらも涼やかな顔で、前髪一本も揺れることなく、見つめている。

 そう――なぜなら全ては、彼のスマホの画面上で繰り広げられている出来事だからだ。

「ついに倒した……」

 難易度超級の冥王アモデウス――この攻撃で決まらなければ、次のターンで完全にやられていた。クエストで地道に貯めたジェムをつぎ込んで幸運にも唯一手に入れた超激レアの『勇者ヘラクレス』。その最終進化形態で使える『奥義・エターナルフラッシュ』をもってしても倒せなければ、禁断のガチャ課金に手を伸ばすしかなかった。

 この相手を攻略するために玲仁は研究とキャラ育成を重ね、ついにひと月もかかって今ここに――偉業を達成したのだ。

 真っ白に染まった画面はゆっくりとフェードしながら元の戦闘画面へと戻っていく。憎き奴の姿はそこにはもうない。

「やった、ついにやったぞ!」

 玲仁は半年以上ハマり続けていたゲーム「戦神プロジェクト」の集大成ともいえるべき一戦の勝利に浸りながら、戦績画面をにやにやとみつめていた。

「何がついに倒しただって?」

 突然の声に玲仁は顔を上げた。その視線の先には、あきらが立っていた。

 皆方みなかたあきら。玲仁が通う高校の生徒なら誰も知っている、ワル中のワル。その脇にはいつも引き連れている同じくクラスメイトの男たち数名もいた。

 玲仁は彼が自分に声をかけてきたことに驚いた。

「こんな道端でキモイやつがいると思ったら、お前うちの高校の制服じゃねえか。何年だ?」明が距離を詰め、挑発してきた。

 玲仁は困惑した。

 きっと何かの間違いに違いない。こんな札付きの不良が、平凡で波風立てずに過ごしてきた玲仁に用があるわけがないのだ。

 うん。きっと何かの間違いだ。スルーして再びスマホに目線を移す。

「おい、無視してんじゃねえよ!」

 え、本当に僕に絡んできてる? 玲仁は驚き、再び顔を上げた。

 同時に胸ぐらをつかまれた。明の腕から鼻をつく不快な匂いがする。何かの香水だろうか。色気づいてるな。いや、今はそんなことはどうでもいい。この場をどうにかして切り抜ければならない。

「僕に何か用……ですか?」

「は? 何言ってるんだてめえ」

 質問に質問で返す、だと? 玲仁は理解に苦しんだ。

「てめえ。何か言えよコラ」

 そういうことか。どちらの選択肢に転んでも、結末は同じパターン――最近のゲームですらそこまであからさまに手抜きな展開はやらないのに。それが現実では、往々にしてある。わかっている。いずれこのままだとタイムオーバーになり、罵られ、理由もなく殴られる。

 現実は常にゲームよりも難易度が高く――残酷だ。

 となればもう、次の行動に移るしかない。

「あ!」

 玲仁が突然立ち上がり、上に指をさす。

「ん?」

 明が一瞬気をとられる。その隙を玲仁は見逃さなかった。古典的な手法ではあるが――単純な相手には有効な手だ。ぽかんとしている明の脇を駆け抜けると、その勢いのまま全速力で逃げ出した。

「待てよテメェーー!」

 玲仁は背後をちらりとみる。案の定、明とその連れが、全力で追ってきていた。

 なぜ追いかけられているのかいまだに理由がわからない。動物は逃げられると本能的に追うというけれど、まさに不良というのは野生動物と何ら変わらないのだなとつくづく思う。

「こうなったら――あの場所に隠れるしかない」

 明たちの視界から逃れながら、右に曲がり左に曲がり、玲仁はとある場所を目指した。

 玲仁がゲームを遊ぶときに、自分ひとりの世界を邪魔されないために確保した場所――『神明社しんめいしゃ』に。

 神明社は全国に約一万八千ほどあると言われる天照大神あまてらすおおみかみまつる神社だ。それ以上詳しいことは知らないが、この場所は少なくともそんなに大きな神社でもなければ、手入れもさほどされておらず、比較的人気ひとけも少ない。神主が常駐で管理していないからだと考えられるが、むしろ玲仁にとってはそれが都合が良く、社のひとつを勝手に隠れ家として密かに愛用していた。

 正面にある拝殿はいでんを通り過ぎ、少し離れた位置にあるカギのかかっていない小さなやぐらに忍びこむ。

 明たちが追ってきていないことを確認すると、玲仁はうずくまり、スマホを取り出した。

 再び『戦神プロジェクト』のアプリを起動する。

「ふう、落ち着くなあ……」

 冷静になり、明たちに絡まれたことを思い返すとだんだん不満が込み上げてきた。

 玲仁はクラスで人気者でもなければ、いじめられているわけでもない。特別運動ができるわけでも、勉強ができるわけでもない。至って学校では平凡な存在。だが、そこがポイントなのだ。

 とにかく誰にも邪魔されず、好きなゲームでもして日々をのんびり過ごす。それが玲仁にとっての幸福だった。

 だいいち現実世界には大しておもしろいこともないくせに、攻略するには難易度の高いクエストだらけだ。そんなものに取り組むぐらいなら、確実に時間をかければ報われる、レベル上げが可能なゲームの世界の方がよっぽどマシだ。

 現実はゲームの世界よりどこまでも面倒で不条理――これが玲仁の持論だった。

「ねえ、やっぱりやめようよ。こんなの無駄だってえ――」

 ふと、賑やかな話し声が聞こえ、玲仁は扉の格子の隙間から外をのぞく。同年代と思しき三人組の女子グループの姿がみえた。無論社の中に潜んでいるこちらの存在には気づいていない。

「……ええ、無理無理! 絶対振り向かないってば」

「みんなで頼めば間違いないって」

「カップル成立めちゃ多いって評判らしいよ。絶対いけるって」

 どうも、静けさがウリの神明社に(勝手に玲仁がそう思っているだけだが――)最近妙な変化が起き始めていた。

 とある有名人がここでお参りをして結婚に至ったとか、嘘か本当かもわからないような噂があっという間にSNSで広がり、その結果なぜかちまたでは恋愛成就の神社としてプチブームになりつつあった。その影響で近隣の女子高生たちが立ち寄るケースが頻発するようになったのだ。つまり、玲仁にとっての聖域はここ最近脅かされつつあるのだ。

「恋愛成就ね――」

 恋愛など、玲仁にとってさらに二の次の現実クエストである。大体、神に頼んだだけで恋愛成就なんて――そんなうまい話あるわけがない。ゲームバランス崩壊だ。

 がらんがらん。そんな玲仁の思いなどつゆ知らず、女子グループは『ガラガラ』を鳴らす音が境内に響き渡る。玲仁は無視すべくイヤホンをさし、自分の世界へと飛び込んだ。

 しばらくして女の子たちが去った後、玲仁はゆっくりと社の外に出て、拝殿の正面に立った。今まさに女の子たちが鳴らした『ガラガラ』を見上げる。

「こんなボロい場所に、神様がいるわけないよ」

 そうつぶやきながら、縄の先っちょをつかんでみる。

「そう思いつつ拝んだことは一度もなかったんだよね……」

 案外それが今まで彼女ができなかった原因だったりするだろうか? 玲仁はすぐにかぶりを振った。何バカなことを考えているんだ。そんなことがあるけないじゃないか。

「本当に神様がいるってんなら、とびっきりかわいい、何でも言うこときいてくれる彼女をくださいってんだ! 頼むよ神様」

 そうつぶやきながら『ガラガラ』を揺らしてみた。

 がらんがらん。その音は空へと吸い込まれていく。こんな音で神様が気づいてくれるなら大したものだ。

 静けさが再び境内を包みこむ。

「はい、お疲れ様でした」

 僕は拝殿に背を向け、すたすたと歩き始めた。

「気を取り直して、戦神プロジェクトの続きでもやるか」

 と思い立ち再びスマホを取り出すと、いつのまにか電源が切れている。再び電源ボタンを押すがいっこうに起動しない。ホーム画面が表示されず、玲仁は思わず首をかしげる。

「おかしいな」

 何度か再起動を試みたが、反応がない。

 玲仁は神社を後にしつつ、帰り道でひたすら首をかしげながら真っ暗な画面にむかって何度もタップし続けていた。が、いつまでたっても反応は変わらなかった。

「修理? まさか……最悪だ。お金がかかるし――しかもしばらくゲームできなくなる!? なんてこった」

 そう落ち込みかけた矢先、突如ホーム画面が表示された。

「何だつくじゃん……ん?」

 よくみるとひとつだけ、見慣れないアイコンが出現している。

 中央には白黒の陰陽のマーク。

 アイコンの下端には『ヤオヨロズ』と書いてある。

「なんだこれ? ヤオヨロズ? こんなアプリ入れた覚えないぞ」

 警戒するよりも前に、無意識にタップしていた。するとみたことのないロゴマークが表示される。

「ディケイドシステムズ……聞いたことのないメーカーだな」

 陰陽印おんみょうじるしに似た形のマークが画面中央に大きく映し出され、くるくる回っている。和風統一のデザインか、と玲仁は冷静に思いながらも、やがて画面はホーム画面へとジャンプし、一通りの演出を終えた。

「終わり? あまりにも投げっぱなしだな。チュートリアルもなし?」

 不満に思いながらも、一通りのそれっぽい機能があることは確認する。『ホーム』、『バトル』、『編成』、『ガラッ』……『ガラッ』? 『ガチャ』の間違いだろうか。画面下部に四つボタンが並び、メニューとしてはごくありきたり、むしろ簡素なラインナップだ。

 玲仁は手当たり次第のぞいてみることにした。まず『編成』をタップした。一般的なソーシャルゲームと同じ作りなら、きっとここに自分のデッキが並んでいるはずだ。ところが玲仁の予想とは裏腹に、キャラが一体もない。仕方なくホームへと戻り、操作を続ける。

 次は『バトル』、これはボタンが暗くなっており、押しても変化がなかった。きっとデッキが組まれていないからだろう。バトルするにもキャラがそろっていないと意味をなさないはずだ。この手のゲームのセオリーは玲仁の頭の中に叩き込まれている。

「最後はガラッ……? か」

 謎のネーミングセンスを怪しみつつも、もはや玲仁にとっては警戒心よりも好奇心が勝っており、すぐにボタンをタップする。

 すると別の画面へと移ったところまではよかったが、期待に反して「所定エリアでタップしてください」というメッセージがポップアップして、それまでだった。

「所定エリア? どういうことだ」

「どうかしたか?」

「いや、どうも何もエリアの説明が何もなくて――」

 と自然に話始めて玲仁はハッと我れに返り、顔をあげた。

 そこには明とその仲間たちが立っていた。

「よお。やっと会えたな」

 しまった。玲仁は油断していた。『ヤオヨロズ』アプリに夢中すぎて、まったく周りの気配に気づいていなかった。そもそもそんなに遠くに逃げたわけではない。見つからない保証などなかったにもかかわらず、起きていた奇妙な出来事のせいで周りが全くみえていなかった。

「さっきはよくも堂々と俺たちから逃げてくれたな?」

「えっと――今日だけ、見逃してくれないかな? ちょっと気になることがあって……」

「それは無理だな。今おれは、すげーむしゃくしゃしてる」

「はは、まあ――そうですよね」

 玲仁は再び振り向き、駆け出す。

「おい、今度は逃がさねえぞ!」

 走りながらも、背後から明の執念が伝わってくる。そのひたむきさをもっと別のことに捧げばいいのに、と考えながらも玲仁は再び神明社の境内に戻ってきてしまっていた。

 息を切らしながら、玲仁は嘆いていた。

 僕はただ静かにゲームをしたいだけなのに――。

 社の正面で膝に手をつき、ちらりと振り返る。明たちはきっちりとついてきて背後に立っていた。

 明の右手が玲仁の胸ぐらを素早くつかみあげた。再び香水の独特の匂いが鼻をつく。襟ごと首が締めあげられ、息苦しさで顔をしかめる。

「なんだその生意気そうな面はよお!」

 そのまま後方へと投げ飛ばされ、玲仁は社の正面に備え付けられた賽銭箱へと背中を豪快に打ちつけた。

「イテっ……」

 思わず声が漏れ、玲仁はスマホを落としその場にうずくまった。その光景をみて明が笑うと、取り巻きも釣られるように一斉に笑った。

 玲仁は唇を噛みしめる。何も悪いことをしていないのに、なぜこんな仕打ちを受けなきゃいけないんだ? なんとか立ち上がろうと片膝を立てるが、力が入らない。

「何なら神様にでも助けを呼んだらどうだ?」

 明がケラケラと笑う。玲仁は想像を巡らせていた。

 全くだ。本当に神様がいるなら、恋愛どうこうよりもまず、今目の前で起きている光景を何とかしてほしい。自分の庭で起きているもめごとすら解決してくれないで何が神様だ。ありがたくも何ともない。

 足に力が入らず、必死で真上にあるガラガラの縄をつかむ。玲仁はそのままガラガラの縄の先を引っ張り、むりやり体を引き上げた。同時に、がらんがらん、と鈴の鳴る音がする。

「ん?」

 全員の様子が、どこかおかしい。玲仁でなく、その横の床に視線が落ちている。

 なんと、そばに転がっていた玲仁のスマホの画面が、白い光を放っている。

「勝手に……光りだした?」

 次の瞬間、スマホは今までとはくらべものにならないくらいの閃光を放ち、その場にいる誰もが目をつむるほどのまぶしさに包まれた。

「うわっ!」

「な、何をしやがったてめえ!」

 明がわめき立てる。しかし驚いているのは玲仁も一緒だ。何が起きたのかさっぱりわからない。

 やがて光が収まり、おそるおそる目を開ける。明たちも立ち尽くしたままで、特に変わりがない。

 ただひとつ――目の前に見知らぬ少女がぽつんと立っていたことを除いては。

「誰…?」

 その少女は、長い黒髪に、同じく吸い込まれるような黒い瞳をしている。白と赤を基調としたきらびやかで高級感のある装束を羽織り、すらりとした姿勢で立っていた。まるで時が止まったかのように、しばらく誰もがその子をみつめていた。

 玲仁はもう一度瞬きして、目を凝らす。どう考えても明の取り巻きの一人ではなさそうだ。この神社に巫女さんなんていたっけ……と想像を巡らせ始めた直後に、その女の子は隣にいる玲仁に目線をやり、口を開いた。

「はじめまして、玲仁様」

《感想》

先日、自分はツイッターにて「小説にやたら難しい日本語をねじ込んでくるアマチュアさ作家って結構多いけど、わかりやすい文章が好まれる現代の市場を考えてみるとそれは少しずれているような気がする」なんてつぶやきをしました。

今回はそこに重点を置きながらこの小説を読み勧めていったのですが、正直この小説も難解な日本語がそれなりに多く使用されています。

ですがどいうわけかとても読みやすい作品になっているのです。おそらくわかりやすい語句と難解な語句の割合がちょうどいいのでしょうね。

一切乱されることのないテンポの良さに、思わず一気のみならぬ一気読みをしてしまいました(笑)

三人称視点も非常にうまいこと使いこなせていますし、この作者さんにはぜひとももっと人気のあるジャンルで勝負してみて欲しいです(´∀`*)

ただ一部ここはどこなのか――つまりは場面の場所がわかりにくいところがあります。これ以上説明描写を増やしても、あまり作品にとってプラスになるとは思えませんからこれは難しい問題ですね(^_^;)

管理者のツイッター
バミトントン 管理者のツイキャス
バミトントン ツイキャスでは時に小説関係のお話を。時にくだらない羽目外しな企画を行っていきます。

プッシュ通知を

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です