第二章までは読んでほしい! 『夕立の鏡花-カクヨム』

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《作品タイトル》

夕立の鏡花

《作品情報》

作者“セミ子”

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あらすじ

 幼い頃に起きた交通事故で記憶を失い、それが原因で他人との関わりが希薄だった高校生、四季 秋良。ひょんなことから動物と話せる少年、広瀬 光や水を操る少女、桜芽 鏡花と友人になるが、次々に現れる能力者たちの『秘密』や学校の『謎』へと巻き込まれていくことになり……!? 自称『人を笑顔にする能力』を持つ秋良と、能力者たちの異能力ミステリー!

ジャンル

ローファンタジー

キーワード

異能 現代 ライトノベル 学園 シリアス SF 高校生 コメディ

掲載日  

2018年6月20日 14:19

《第一話特別掲載》  

第1話 それは勇気から始まる

 蛇口からこぼれた雫が、コップに落ちて水音が弾ける。時刻は8時16分。学校へ行く時間が迫っていようとも、俺、四季秋良しきあきらは熟睡していた。

 それから約5分。寝返りと同時にゆっくりと瞼を開けると、だんだん視界がはっきりとしてくる。俺は、頭をグリグリと毛布に押し付けた。

 朝の光が差し込んで暖かくなった毛布は、やけに気持ちよく、猫にでもなった気分だ。

「うー……」

 ふと手を伸ばした先には、恐竜の形をした、お気に入りの目覚まし時計が『おはよう』とでも言っているようだ。そして、その恐竜の腹部を掴み、両手で目の前に持ってくると、俺は、「はあああああああああ!?」と、絶叫する。

 時刻は8時23分。カチッと秒針が動いて、たった今24分になる。俺は真っ白になった頭のまま恐竜君を枕元に置くと、顔面を両手で覆う。

「まじか」

 その一言を合図に、がばっと立ち上がると、急ぎに急いで歯磨き、着替えを済ませる。

 朝食は――食べる時間なんてないから、よし、冷蔵庫にあるチーズを持っていこう。

 8時32分。俺なりに頑張ったと思う。このまま急げば間に合わないこともないかもしれない。リビングの扉を開けようとした俺は、ふと、あの人たちのことを思い出すと、振り返って「いってきます」と小さく言った。

 ぎこちなく写る幼い少年の両脇で、にこやかに笑う老夫婦の写真。憶えのないこの写真は、何も無い俺にとって大事な過去だ。

 あまり口にしたことはないが、俺は交通事故に遭い、それ以前の記憶が欠けてしまっていた。高校2年生にもなれば、幼い頃の記憶なんて、あろうとなかろうと結構生きていけるものだが。

 そんな事を考えながら、ふと、写真の横の時計が目に入った俺。大口を開け、声にならない叫びを上げた。勢いよく玄関の扉を開けるが、上手く履けずに踵を踏んでしまった靴の爪先を鳴らす。スルリと靴に足が収まると、扉に鍵を掛け、家を飛びだした俺は全力疾走。

 それはもう風のように速く――走れたら良かったのだけれど、残念ながら俺の足はそんなに速くはないのだ。

 時刻は8時38分。その残念な足で、やっと学校の敷地内に辿り着けた。

 あと2分で朝礼が始まってしまうが、ここまで来たら2分もあれば教室なんてスライディング入室できてしまうだろう。

 そう、いくら今ここで不良が『兄ちゃん、金目の物があるなら出しな!』と、すごく怖い顔で言ってきたとしても『今の俺は誰にも止められないぜ!』という正義を振りかざして、教室を目指したに違いない。まぁ、俺の通う高校で、そんな不良は見たことも会ったこともないのだけれど。

 そうそう、たとえウサギ小屋の前で、かよわそうな女子が不良に絡まれていようとも……

 んん? 絡まれて……??

 俺は目が点になったまま、元来た道を、まるで巻き戻し再生でもされているかのようにバック小走りで戻った。戻ること約5歩。そこで俺の目に映ったのは、ショートヘアの、ふんわり金髪女子が困った表情で、不良二人組に絡まれている図だった。ウサギ小屋の前で。

 えええええ、絡まれてるううううう! ていうか、この学校、不良いたんだ!

 どうでもいい驚きはさておき、木の陰から俺は、じぃっとその様子を見つめる。自分の通っている高校のはずなのに、俺は不審者と認定されてもおかしくないポジションだ。

「あいつら、どう見ても仲良さそうな雰囲気じゃない……よな?」

 携帯電話の画面をスライドすると、時刻は8時41分。教室では、すでに先生が現れて、朝礼を始めている頃だろう。今、走ってスライディング入室すれば多少怒られるリスクはあるが、まだ助かるかもしれない。ふんわり金髪ちゃんも、不良組も、何も見なかったことにして教室に向かえば、俺は今日1日を普通に始められるだろう。

「た、すけて……」

 そんな声が聞こえた。俺は上を見上げると、ため息をつく。

 高校二年になって1週間ほどが過ぎていたけれど、桜の花は綺麗に咲いている。

「寝過ごして遅刻した上に、昼の弁当は持ってくるのを忘れて、金もない。朝食のチーズが俺の救い ……だと?」

 俺は、ふっと笑うと、携帯電話をぎゅっと握りしめた。

「盛大な八つ当たりの始まりだ!」

 俺は、ズンズンと歩いていく。足が微妙に震えているのは秘密だ。ふんわり金髪と不良二人組の前で立ち止まると、ポカン、と口を開けている三人に向かって指をさした。

「俺の遅刻は、おまえらのせいだから!」

 誰もが唖然としている中、すごい形相で言い切った俺。すると、不良の強そうな方がククッと笑う。

「何言ってんだ? こいつも変な奴なのか?」

 ふんわり金髪がピクッと動いたような気がした。「なぁ?」と言った不良が、金髪の髪を掴むと「痛っ!」と小さく呻く。

「おまえもこいつと一緒に……なっ!?」

 手頃な蛇口を発見した俺。あれだ、ニワトリ小屋やウサギ小屋の汚れたものを洗ったり、花壇の花に水を与えたりするための手洗い場にある蛇口だ。その蛇口には、緑色のホースが繋がっている。

 俺は、不良が全部を言い終わらないうちに、近くにあった蛇口を思いっきり捻っていた。

 ホースを素早く持つと、俺の手の中で暴れるホースの口を親指で潰し、不良の顔面めがけて突き付けた。噴射する水は、見事にリーダーを直射!

 不良リーダーは、何が起きたか分からずにしばらく動かなかったが、すぐに体をずらすと、ごほごほっとむせていた。

「ごほっ……やりやがったな!? おま、ぶっ」

 また言い終わらないうちにホースを噴射させる。今度は、不良2号が襲いかかろうとしてきた。だが俺は、不良2号にも迷いなくホースを噴射させる。2号がむせたらリーダー、リーダーがむせたら2号……。

 絶妙なタイミングで交互に噴射させる様子は、まるでコントだ。

「朝からシャワー浴びると体に悪いらしいけど、大丈夫?」

 クスッと笑う俺を、びしょびしょになったリーダーがすごい目力で睨みつけてくる。

 本当は怖かったけれど、ここまでやらかした俺は、どうにでもなれと思っていた。

 そしてリーダーが拳を振り上げた瞬間、頭の中で『あ。俺、終わった……』という、もうひとりの俺の声がした。

 ぎゅっと目を瞑って、そのあとの衝撃に備えていた俺は、数秒経っても訪れない衝撃にゆっくりと目を開ける。

 おそるおそる顔を上げると、足、スカート、赤いジャージ、長い黒髪、と順番に見えていき、最後には、女子生徒の背中に守られていると悟った。

 え、なにこれ。

 朝の爽やかな風で桜の木と、女子生徒の長い髪が揺れる。不良リーダーの、俺に向かって振り上げた拳も空中でピタリと動きを止めていた。

「今日は、いいかんじに水が撒いてあるんだね」

 女子生徒は意味不明な言葉を呟くと、不良リーダーに小首をかしげて微笑んだ。

「ちょっ、君、これは男同士の戦いであって……」

 ごにょごにょ言っていた俺が、何かがおかしいと気付いたのは女子生徒の肩に触れた時だった。

 そこから見えた不良リーダーの表情は、明らかに引きつっている。何か恐ろしいものを見たとでもいうような、そんな顏。

 そしてこの女子生徒。時折、長い髪が風で揺れると、前髪に隠れた横顔が笑っているのが見えるが、取り巻く空気はピリピリとしていて、おかしな雰囲気を纏っている。

「あのさ、そろそろ教室に……」

 冷や汗交じりに事を終わらせようとした瞬間。女子生徒と隣にいた俺、そして目の前にいた不良たちを囲み、地面から水が噴水のように上がった。

 突然のことに、俺は言葉を失う。水が!? 地面から!?

 えっ、えっ、とわけのわからない俺は、きょろきょろと周りを見回す。

「まだ……寝てるのかな、俺」

 苦笑いで女子生徒を振り返った俺は、ぎょっとした。

 この高校では学年ごとに違う色のジャージを体育の授業では着用することになっているのだが、おそらく彼女も、この高校の2年生なのだろう。女子生徒が着用している赤いジャージをめくると、制服――つまりセーラー服を着ていたのだ!

 いや、俺が驚いたのはファッションセンスのことじゃなくて!

 そのセーラー服の腰部分には、ベルトのような物で、いくつものペットボトルが装着されていた。俺は、それに驚いたのだった。

「ペット、ボトル……!?」

 もう何がなんだかわからずに不良と同様、俺は口角を上げたまま顏を引きつらせる。

「ひぃいいいい」

 不良たちは、なぜか怯えている。え、君たち、あれペットボトルだよ? いや、ある意味怖いけども! 冷静に心の中でツッコミを入れる俺。だが、奇妙な現実には続きがあった。

 女子生徒は1本のペットボトルのキャップを開けると、まるで刀の鞘を抜くかのような動作で動きを止めた。すると、ふわりと何かの塊が宙に浮き、形を形成していく。少女の周りで水の勢いが増す。

 それは、先ほどまで俺もこの手に触れていて、日常的に触れないほうがおかしい代物だった。

 水だ。

 だが、俺の知っている『水』は、こんなふうに宙には浮かばないし、そもそも地面が、勢いのいい噴水広場みたいになったりしない。水ではない何かなのか?

 しかし俺の目に映っている液体が、そして俺の制服を濡らす飛沫が、これは水だ、と直感させていた。

 後ずさる俺の足元で、さっきまで武器として使っていたホースの水が、ちょろちょろ……と流れ、地面に穴をあけていた。ホースの水の半分ほどは、地面から突如現れた水の柱に向かって消えていくように見える。

「……吸い取られてる?」

 唖然とする俺にはお構いなしに、少女は某野球選手のようなポーズでそれを不良たちの目の前に突き付けていた。降りかかる水飛沫の中、俺は、それが水で作られた刀だとようやく分かる。

 水の音にかき消されながらも、不良たちの『ひぃいい』という悲鳴が上がった。

「桜の季節は花見しないとでしょ。私の花見タイムを邪魔するとはいい度胸だよ、ほんと」

 急に、ニタァと笑う女子生徒。ゆらり、と影が落ちた先を見上げた俺は驚愕する。女子生徒が不良たちに向けて、水の刀を振り上げていたのだった。

《感想》

この小説は最低5話(第一章)までは読んでほしい!

本番は第二章からといった感じですね。

第一章の間は説明の仕方が独特すぎるあまり、若干状況がわかりにくい文章が続きます。

第二章は広瀬というキャラが中心で書かれたいわゆる過去編なのですが、このあたりからは独特な説明の仕方が+に回り始めてどんどん面白くなってくるのです。

内容としては今ではあまり見なくなってしまった異能力系なのですが、オリジナリティのある設定に加え、予測の難しい展開がこの小説の売りと言えるでしょう。

ギャグ的な要素も多めで、かなり読みやすい小説だと思いますので是非ご一読お願いしますm(__)m

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