異世界で織り成すヒューマンドラマ?(王道……かな?) 『道連れフロンティア』
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《作品タイトル》
《作品情報》
作者“九羽原らむだ”
あらすじ
魔法世界クロヌス。
科学の証明はあまりにも存在せず、その全てを魔法で補い統率をはかる《前人未到の特異文明》である。
ラチェットレンチを片手にこの世界へ迷い込んだ青少年。
奴隷として家畜以下の扱いを受け続ける半魔族の少女。
希望を捨て、捨て身の人生を歩み続けてきた、夢を持たぬ者。
希望を求め、その爛漫と笑顔を絶やさず生きる、夢を願う者。
少年と少女と特殊な文明世界。
旅は道連れであれ、世は旅人に情けをかけるのか。
これは世界をも巻き込んだ、【2人の少年少女の友情の物語】。
ジャンル
キーワード
異世界ファンタジー ライトノベル W主人公 王道
掲載日
2018年10月1日
《第一話特別掲載》
とある世界の一件の酒場。
時は既に夕暮れ時。家族連れで食事を楽しむ者や、仕事終わりのご褒美に一杯飲みに来る集団。公共の場であることを弁えず、些細なトラブルで殴り合いの喧嘩に発展する者もいれば、その喧嘩を見て楽しみながら茶々を入れる馬鹿野郎もいる。
この酒場はいつも騒がしいのが取り柄だ。
基本的に静まり返るところを見ることが少ない。騒音に喧嘩何でもござれの無法地帯はこの酒場にとっては最早日常茶飯事らしく、それを目に気に掛ける人もいない。
強いて言うなら、外の街からのお客さんが少し驚くくらいだろうか。スパルタ達が熾烈を極めるコロッセオの如く騒がしいこの環境を。
まあ、結果として言うなれば、今日もこの酒場は平和な時間を過ごしている。
……静まり返るところが少ない。と話したはずだ。
そうだ、基本的には騒がしいことがほとんどのこの酒場だが、ほんの一時だけ、この酒場が静まり返る瞬間が存在する。
_そうも言っているうちに、その瞬間はやってきたようだ。
酒場の騒ぎ声が一気に静まり返る。
今までのドンチャン騒ぎは一体どこに行ったのだろうか。一同はエサを待つ犬のようにピタリと動きを止める。
ピアノの音だ。
聞こえてきたのはピアノの音。心を奪われるように一同は口を塞ぐ。
心を潤す旋律に、その耳を虜にする音色。
ピアノから奏でられるメロディーは静かな酒場に響き渡る。
「さぁ皆さん。今夜のお話は前の続きと行きましょう」
ピアノを奏でる女性。綺麗な長髪を靡かせ、旋律に乗せて言葉を乗せる。
「このお話は革命のお話。世界に光をもたらした賛歌の物語」
酒場の客たちはその言葉に耳を傾ける。
「暗黒と極白。その2つがもたらす物語」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
時は何処かの世界。
空は暗雲に飲み込まれた。ここは数多くの地獄を生み出した悪夢の風景・デスマウンテンの山頂付近。
かくして、その地にて決戦が行われていた。
背中に生えるは黒い翼。黒き獣皮に包まれた静かなる悪魔。
悪魔は悲哀と恐怖をあたり一面へとまき散らしている。
それに対抗するは……白き翼の戦士。
その姿はまさしく天から舞い降りた天使のよう。天からの使いと告げられた白の天使は悪魔に向けて、その正義の剣を傾ける。
天使は想う。
___終わらせよう。
___そして約束を果たそう。
___……一緒に帰るのだ。2人約束したあの場所へ。
天使は翼を広げ、その剣を悪魔の胸へと突き立てた。
瞬間、世界は極光に包まれた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この物語は世界を救う英雄の話ではない。
ましてや、悪魔という存在から希望を守る、”人類万歳”を称した遺作などでもない。
これは、2人の物語。
その身を顧みぬ【黒き孤心の少年】。純粋無垢な【白き爛漫な少女】。
物語のページを開いてもらおう。
これから始まるのは……世界すらも道連れにしてしまった。
【2人の少年少女の、友情の物語である。】
以下【第二部】
夏場の仕事に長い時間休憩もなく身を浸しているとき程、休日が妙に恋しくなることはあるだろう。
特に冷房の行き渡っていない猛暑の仕事場は地獄以外他ならない。サウナに放り込まれたようで息苦しいったらありゃしない。
例えばガソリンスタンド、自動車のパーツ工場に、自動車整備工場……と、ここまで自動車関係の仕事のみを口にしたが、別に自動車が嫌いというわけではない。
ただ、猛暑に関しては愚痴も出たくなるほど嫌悪感がある。
汗のせいで妙に長い後ろ髪が首に絡みつく。作業着も当然だが、中に来ているTシャツと下着もズレて気味が悪い。
”自動車の修理場”は暑さと熱さで頭がおかしくなりそうになる。
まず、冷房が行き届いていないガレージ。水分不足を補うために用意されたペットボトルのミネラルウォーターもあっという間にぬるま湯だ。
アイスノンや氷嚢も数分経たずに使い物にならなくなる。生暖かい上に柔らかさのあるアイスノンなんて気持ちが悪くなるだけだ。
オイルの匂いも熱を妄想させるために体が火照ってしまう。
熱を帯びた自動車の真下に回り、機械臭くて狭いところから数時間も睨めっこする。
厳しい。
夏場限定だがそう思ってしまう。
こうやって冷たさを求める時。冷房の効いた休憩所で、おすすめバカンスが収録されたカタログや雑誌が目に入る。そこに映るのは大抵南国か海の景色であり、火照った体を絶妙に冷やしてくれる。
程よい暖かさに綺麗な景色。
安月給で過ごしているため叶う夢ではないが、やはり一度は行ってみたいと思いたくなるものではないだろうか?
……その夢、まさか叶うとは思わなかった。
静かに体を冷やす風で綺麗になびく草原、見渡す限り真緑の綺麗な景色。
座り心地の良い岩場に腰かけ、猛暑に苦しむことなく景色を楽しんでいる。
貴重な経験だ。
こういう景色を目にし、心も壮大に安らいだところで明日もまた仕事を頑張れるなんて気持ちになれる。酔狂とはよく言ったものだ。
リラックスもしたところで明日の仕事も奮闘することにしよう。
今日の貴重な時間を忘れず、明日に備えてしっかりと休まなくては
……さてと。
「ここは何処なんだヨ」
広々とした大地の真ん中。
自動車整備の職場の作業着を身に纏い、ラチェットレンチを片手に持った自分は、やつれ切った表情で空を見上げていた。
《感想》
しばし異世界転移小説が、無双とギャグだけで成り立つ時代が続いているような気がしなくもないですが、この小説は意味もなく無双するわけでも、無理やり押し込んだギャグで場を整えているわけでも無くて非常に読んでいて心地が良い小説でした。
三人称視点は一番簡単な視点!
などとおっしゃる方も中にはいらっしゃいますが、実際のところ三人称視点は汎用性が高いというだけで簡単というわけではないのです。この作者さんはその点をよく理解している気がしました。
ぶっちゃけ、ポイントが低めな理由がわからないですね。
読んでいて
『すげぇ!』
ワクワクできましたし、つまらなくはないと思うのですが(‘◇’)ゞ←人によりますよね(笑)
ワクワクと言っても別に今のところただひたすら冒険をしていくといった感じの小説ではないです。ですが、意外とヒューマンドラマ的な側面が強く、
「結局かかわっていくんだろうなー」
といった感じでワクワクさせられました。
楽しみ方は人それぞれっすね(;’∀’)