『魔宙戦争~宇宙の魔力を受け入れるマハクのチートで、貧弱な人間は恋人のために支配階級の魔族と戦う~』ラノプロ
web小説紹介
《作品タイトル》
魔宙戦争~宇宙の魔力を受け入れるマハクのチートで、貧弱な人間は恋人のために支配階級の魔族と戦う~
《作品情報》
作者“如空”
あらすじ
遥か彼方という表現すら当てはまらない、魔力によって動く並行宇宙。
魔宙皇国の辺境の惑星・チキュウで、恋人のサラを魔族に奪われた少年、リン・アマカケは、恋人を取り戻すために立ち上がる。
宇宙の他部族と比べてこれと言った長所のない無力な部族、ニンゲン族に生まれたリンは、そのままでは魔族には勝てない。
だが、砂漠を支配する凶暴なサソリ型のスナ族ですら手を出せない、隠者、ベンから、宇宙を満たす魔力を活用する秘術・マハクの力を学ぶ。
そして、サラを奪ったチキュウ魔王、更にやがては宇宙を統べる宇宙魔皇にまで挑むようになる。
これは、一途な愛によって導かれた少年の、成長物語である。
ジャンル
キーワード
古典恋愛 オリジナル戦記 ヒーロー 冒険 スペースオペラ 男主人公 魔王 パラレルワールド チート
掲載日
2018年 11月03日 07時00分
《第一話特別掲載》
「劫火にて全てを焼き尽くせ。魔炎球」
リン・アマカケは、そう唱えた。
今の敵は魔物。この世界では、貴重な食糧源となる、魔力を帯びた動物だ。
その姿は、鹿に似ているといって良かった。草食性で、比較的大人しいが、体力はそれなりにある。
魔炎、すなわち魔力の炎で焼いて食べると、上等な黒毛和牛のような味がするので、中々美味い。
しかし、彼にとっては、この鹿のような魔物は、狩りの対象というよりはむしろ、鍛錬の相手であった。
真の敵は、恋人サラを連れ去った魔族。
より具体的には、この辺境の星、チキュウを統べる、チキュウ魔王であった。
他族と異なり、これと言って秀でた点のないニンゲン族の彼にとっては、いくら辺境とはいえ、星一つを統べる魔族の長を倒すためには、強くなる必要があったのだ。
だから、あの日以来、こうして、あらゆる魔物を相手に鍛錬を重ねていた。
しかし、魔力がSFばりに発達し、宇宙の全ての法則を貫いているこの世界においては、高い魔力を誇る魔族を倒せるという予感は、いくら魔物を相手にしていても、遂に得られることはなかった。
何よりも、ニンゲン族は、体力はオオカミ族やトラ族に劣り、魔力と支配力では、この宇宙を統べる魔族、そして空を駆ける竜族に劣り、知力でさえも、タコ族やエルフ族に劣るという有様の、パッとしない部族。
魔術で戦えばすぐに魔力切れを起こしてしまうし、体を動かしても魔弾に撃ち落とされるし、知力を以て抗おうにも、向こうに策士がいれば簡単に絡め取られてしまう。
器用貧乏にして、無力。それこそが、ニンゲン族の特徴であった。
だが、それでも、サラを…愛する人を取り返したい。
その想いだけで、リンは鍛錬をしているのであった。
「確かにあなたはニンゲンとしては強いのかもしれない。でも、これではいつまで経っても並みの魔族すら倒せるか怪しいわね。
サラを失った悲しみは、私だって同じ。でも、そろそろ前を向かなければいけない時期じゃないかしら」
そう言ったのは、サラの親友のレイであった。
サラが魔族好みの黒髪スレンダー美少女であるのに対し、レイは、金髪碧眼で豊満…一般には、ニンゲン族やエルフ族が好みとするタイプの美少女であった。
だが、リン・アマカケは、ニンゲンでありながら、サラを愛した。将来をも約束する仲であったのだ。
何故なら、彼女は、彼を救ってくれた、女神のごとき存在であったから。
否、それだけではあるまい。
気高く、美しく、…この世界に日本があったら、三次元を対象とするストレートの男は、皆一目惚れしたであろう、圧倒的美貌。
美貌に似つかわしい、よく通る美声。
自身の全てを受け止め、受け入れてくれる、底の知れない包容力。
そして、ニンゲン族の中では最上の部類に入る知性。
しかし、それだけでもない。
リンは、サラの全てが好きだった。理屈ではない。
良いと思う要素をどこまでも意識的に拾ったところで、それらを再構成した何者かに惚れるということも、その存在をここまで愛するということも、できなかったであろう。
盲目的で、崇高な。
軽い友達気分に毛の生えた程度の付き合いが多いこの世界では珍しい、一途で、純粋な愛。
サラはそのような、あるいは命がけとすら言えるような愛を受け止め、応えてくれた。
それは、親友と言えども分かる世界ではないだろう。だから、リンはこう答える。
「彼女だって私を信じて待ってくれているはず。だから、私は、なんとしても、この無力を覆さなければならないのだ」
しかし、リンはまだ知らなかった。宇宙を統べる魔族、魔宙皇国との戦いは、辺境の星での恋人奪還だけでは終わらないということを…。
《感想》
ジャンルこそハイファンタジーと書かれていますが、どちらかと言ったらSF小説に近い部類なのかもしれません。
この場合のSFはサイエンスファンタジーになりそうですが(‘◇’)ゞ
着眼点は非常に面白いと感じました。
ハイファンタジーは地球じゃなくてはいけないのか
↑この疑問は至極まっとうなものだと思います。
しょせんファンタジーのサブジャンルでしかないハイファンタジーには、いくつかの解釈がありまして、そのうちの一つに『舞台が異世界で進んでいくファンタジー作品』というものがあります。
これを基準に考えてみると、この作品のような宇宙が舞台で、しかもSFチックな世界観でもハイファンタジーと呼ぶことができるのでしょう。
この作品はマハクやマコクといった全く新しい概念が使われていることが原因で少し説明が中心になっている場面もありますが、作品全体としてはスムーズに物語が進んでいて非常に読みやすい作品です。
SF小説の変化球物が好きだ!
という方には非常におすすめの作品ですね。